幸福を売る男
芦野 宏
Ⅱ 夢のような歌ひとすじ
1、ポピュラーの世界へ
日劇出演と第一回リサイタル-5
日劇出演の間をぬって、私は昭和三十一年四月から五月にかけて、五日間の連続リサイタルを銀座の山菜ホールで行っている。なにかパリのシャンソン小屋を思わせるような、定員五〇〇名程度の小さなホールで歌うことが気に入って、昭和三十二年、三十三年と続けて一週間ずつの連続リサイタルを行った。
(注)
連続五日間の独唱会 新記録めざす 芦野宏(産経時事、昭和三十一年三月十日)
「…‥毎年暮れに越路吹雪が三日間独唱会を催すが、芦野の五日間は新記録。しかもプログラムを三つ用意したという周到さ。『シャンソン・ルンバ・タンゴの夜』という会の名前をつけたように、曲目も「アマポ-ラ」「ジーラジーラ」「花に寄せて」「詩人の魂」「街角」「頭にいっぱい太陽を」「セ・カミニート」「星を夢みて」「ドミノ」「ボレロ」「パリの屋根の下」「ラ・ヴィ・アン・ロ-ズ」「ラ・メール」などのヒットソングに、「ボンボン・キャラメル」などの新曲を含めて約六十曲。……」。ただし、一日の曲数は三〇。
デビュー後二年間に放送などで歌った曲目をプログラムの巻末に「私のレパートリー」として載せて あり、シャンソンの一〇〇曲を筆頭にラテン・タンゴ、コンチネンタル・タンゴ、アメリカの歌、日本の歌など、全部で二〇〇曲ほど。コーラス、トリオ・ヴォラン(高毛礼誠、木村正昭、柳川語)。ピア ノは寺島尚彦、ギター国藤和枝。