六月のうた

六月のうた

芦野 宏

 どんより曇ったしんじゅ色の雲は

 濡れてくる恋の涙をこらえているのか

  今にも崩れそうな六月の雨は 恋する男の描く

 灰色の絹のカンバスだ

 海は 波立つところで明日を期待しているのに

 風は 一向にはげしい愛撫を与えてくれない

 都会の女は 胸に真珠のたまを

 飾っているけれど

 あれは六月生まれの男が

 胸で流した涙の結晶だといことを

 知っているのだろうか
 
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