幸福を売る男
芦野 宏
Ⅲ 新たな旅立ち
4 石井音楽事務所時代とその前後-1
音楽事務所あれこれ
菊池音楽事務所時代の仕事は全国各地の労音の仕事が多く、一年じゅう全国を飛びまわるような忙しさだった。今なら、ロックなどの歌手たちがやっている全国縦断コンサートのようなものだろうか。いや、今日のように大きな会場も少なく、こまめにまわったところもあるから、回数でいえば、それ以上をこなしていたと思う。
ひと月のハード・スケジュールの最たるものは、昭和三十四年(一九五九)七月の二〇日間、大阪で三〇回もの労音公演や、NHK『くらしの窓』が三年目に入っていた三十九年四月、東連日のリサイタルであろう。まったくよく仕事をし
たものであったと思う。田中宏和さんがいつも同行して裏方の手配をしてくれ、ときには演出も手がけられて、助けてくれたから続いたようなものであった。
結婚して長男も生まれ、ジルベール・ペコーの「旅芸人のバラード」ではないが、そのような毎日からもう卒業してもいいのではないか、といつも考えていた。そんな矢先、石井好子さんが西銀座に音楽事務所を開き、タレントをかかえてマネージメントを始めたことを知り、私にはたいへんな魅力であった。芸大の先輩として、またクラシックからポピュラーに進まれた先輩として、もともとその人柄も仕事も尊敬していたから、ぜひともその仲間に入れてもらいたかったのである。石井さんの事務所は労音のような組織に頼るだけでなく、全般的な分野で仕事ができて、長い公演旅行も断ることができると思ったので、なんとかして移籍したいと望んでいた。
プロダクションから離れるとき、芸能人との間でトラブルが生じることは避けられない宿命みたいなものではないだろうか。私の場合も、まったく円満というわけにはいかず、しかし私のほうには理由があった。私が信頼してマネージメントをお願いした菊池維城氏が数年前から現場を離れ、東芝音楽工業設立と同時に正社員として重要な地位に就かれ、菊池事務所の経営は安井直康氏に任せていたからである。安井氏は誠実な仕事ひとすじの人で、事務所のために仕事をたくさん取ってきた。それが私のハード・スケジュールとなり、私を苦しめ、積もり積もって私に不満をもたらしたのであった。
菊池氏は私の心情を理解してくださり、やはり芦野さんのお考えどおり、石井先生にお願いするのがよいでしょう、私が現場を離れてレコード会社のほうに専念し、任せきりにしていたことが悪かったのだ、と穏やかに対応してくださった。しかし、安井氏の胸はなかなか納まらなかったにちがいない。私は石井さんにお願いして安井氏と私と三人で会うことにした。不穏な空気が流れ、私は居たたまれない雰囲気のなかで、石井さんにすべてを任せて解決した。
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5月ライブスケジュール
※変更になる場合がございます。ご了承ください。
日 時 開演時間 出 演
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決定次第、ご案内いたします
2020年7月4日(土)・5日(日)
シャンソンの祭典
第58回 パリ祭
(NHKホール)
(裏面) 時間:16時15分開場 17時00分開演
会場:NHKホール
主催:パリ祭実行委員会、一般社団法人 日本シャンソン協会
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
公益財団法人 日仏会館
★ チケット発売中 ★
※日本シャンソン館ではS席(10,000円)のみの取り扱いとなります。A席、B席をご希望の方はチラシに記載されてるお申込み先まで、ご連絡をお願いいたします。
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