「パパと踊ろうよ」-3

幸福を売る男

芦野 宏

Ⅲ 新たな旅立ち

2、お茶の間にシャンソンを

「パパと踊ろうよ」-3NHKテレビに『黄金(きん)のいす』という木曜夜八時からの三〇分番組があった。ポピュラーな音楽界の第一人者が登場する、ドキュメンタルなバラエティショーである。カラー放送も始まって五年、昭和四十年十二月九日「みんなのシャンソン」というタイトルで、芦野宏がその椅子に迎えられた。当日の案内には、次のように記されている。
「芸大を卒業後この道に入ってからすでに十数年、今やシャンソン界はいうにおよばず、音楽界全般にわたってもベテラン歌手として活躍する芦野さんは、日本のシャンソン界に独自のジャンルを切りひらいてきた。今までシャンソンは芸術青年や文学少女など読の人たちの好む〈夜の歌〉であった。ところが芦野さんはそれを明るく健康的なホームソングとしてとらえ、家中そろって歌える歌として紹介
してきた。今夜は芦野さんのこういった面にスポットを当てながら彼の横顔をさぐつていく。
まず彼の隠れた一面である、ユニークな自筆のイラストをタイトルバックに幕が上がる。曲は彼が最も好きだという1ラ・メール」、つづいて芦野宏ヒットメドレーで明るく健康的な歌を聞かせる。
「幸福を売る男」「風船売り」「サラダのうた」「三文ピアノL、そしてサロンに集まった皆さんとともに「カナダ旅行」を合唱する。ゲストは秋山ちえ子、服部公一、声の会、音羽ゆりかご会、司今宮田輝」(朝日新聞、昭和四十年十二月九日)