金メダル雑考


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 お元氣ですか?
 暑中お見舞いを申し上げます。
 もうすぐ立秋、まだ暑い日が續くのにそこからは「残暑見舞い」になりますね。
 このコラムを書き始めたのは8月13日(土)午前11時40分、出演32年目のラジオ(山口放送)の電話出演を終えてからです。
 したがって、リオデジャネイロ・オリンピックは終盤に入ってヤマ場はまだこれから面白くなってきます。
 これまでの日本のメダル獲得数もうなぎ登りでまだまだ増えそうな気配です。12日(金)現在、日本が獲得したメダルは、金7.銀3、銅14の総数24です。しかも、これからがますます期待できる種目もあって楽しみ倍増なのです。テニスの錦織選手が順々決勝でフランスの強豪・モンフィス選手との激闘に勝って準決勝進出です。この試合では数度のマッチポイントの危機に耐えて勝ち、日本勢としては96年ぶりのメタル獲得に王手という快挙です。
 ただ、4強に入っても世界ランク40位と格下の北朝鮮選手に負けた卓球の愛ちゃんの例がありますから油断は禁物です。
 水泳日本も健在ですし、バレーボール、ラグビー、その他の競技も全力で戦っていて、それなりの力を発揮しています。女子卓球団体も健闘中、ポーランドを破って準々決勝進出、個人戦の雪辱を団体戦で晴らすことになるでしょう。
 バトミントンも絶好調です。高橋&松友ペアが2連勝で決勝トーナメント進出、早川&遠藤ペアも世界選手権王者を破って2連勝中、奥原、山口選手も初戦勝利で勢いに乗っていて、夫々がメダルに向って快進撃中です。
 それにしても、男女合わせて12人のメダリストを出した井上康生監督率いる日本柔道も見応えがありました。男子7階級で女子が5階級でメダル獲得、これは世界初の快挙です。
 ただし、問題はあります。
 柔道男子100キロ超級の原沢久喜選手の銀メダルはイライラしました。なにしろ、相手のリネール(フランス)は原沢の指導2本で優位に立つと、徹底して守りの姿勢で逃げまくり、観客のブーイングなど意に介さず勝つことに徹底して2007年以来世界選手権8連覇の実力を見せつけて前回のロンドンに次ぐ五輪連覇で不敗神話をさらに伸ばしました。原沢は序盤で有利な組み手になりながら好機に攻めなかった消極さで負けたのですから、後半のリネールの逃げを責める資格はありません。今までの私ですと、この逃げまくった絶体王者にブーイングですが今回だけは違います。世界一を逃した原沢選手にも同情しますが、リネールの逃げ勝ちを容認しなければならない理由があるのです。
 その理由とは、柔道男子90キロ超級を制したベイカー茉秋(みしゅう)の勝利が、リネールの作戦と全く同じだったからです。指導を一つ受けても自分が優位にあることを知って、徹底して逃げまくりましたので相手には打つ手がありません。それも、時々は攻めますので審判も消極的指導が出せないのです。勝利への執念で日本柔道の伝統である正攻法に反して勝ち逃げを謀ったベイカー茉秋を、井上監督も私達観客も容認したのですから、ベイカーと同じ戦術のリネールを責めることは出来ません。それどころか、これが国際試合で勝つための一番の近道であることを日本柔道までが片棒を担いで世界中に広めてしまったのです。これを容認した井上康生監督は日本柔道復活の道筋を見つけ、国際試合で勝つコツを選手全員に知らしめました。勝つためには積極的に攻めて前半で得点を稼ぎ、後半は守るも攻めるも臨機応変、勝つための柔道に徹底・・これは、勝つために監督の立場では仕方ありません。
 しかし、かつての五輪金の井上康生自身は堂々とした日本型柔道で勝利を摑んでいます。したがって、あえて言わして頂けるならば日本の柔道だけは、時間いっぱい正々堂々と力と技を使った全力での戦いに徹して欲しいものです。外国の血が流れているベイカー選手に武士道まで理解させるのは無理かも知れませんが、指導者の教えで日本柔道本来の姿である心技体いったいの真剣勝負に徹底指導をお願いしたら、きっと何かが変わるような気がします。仮に、これで勝利数が多少減ったとしても柔道本家のプライドは保てます。
 今回の日本柔道の金メダル獲得で私は、母一人子一人で親孝行のベイカー選手が、決勝戦での勝利への執念は理解できますし金メダルも嬉しいのですが、明らかに勝ち逃げを図った戦術には失望しています。ベイカー選手の実力なら思いっきり戦えば一本勝ちできたはずです。
 と、チャンネルを小まめに変えながらテレビ観戦でリオ・五輪どっぷりの私は、いま、すごい寝不足状態、自業自得ですが・・・。