桜で満腹!


  桜で満腹!

       花見 正樹

 私の住む埼玉県の最北部の久喜市栗橋地区は、都心より平均気温が2度ほど低く、桜の開花も一週間ほど遅くなっています。
しかも、一度咲いた桜が、先週初めの雪がチラつく冷気に怯えてか、体を小さく縮めて咲くのをためらい、ここ数日の春日和で一気に花びら開いたようなのです。
これを人間に例えると結婚寸前の男女関係が何らかの事情で冷え切って中断、時期がずれ込んでから和解して無事に結婚したような図式にも思えますが、何はともあれ今日4月2日(土)は桜が満開でした。
まず、小川の橋の上から撮った桜の写真を見て下さい。
 ここから撮った先週の写真を、3月27日(日)のブログに載せましたので、約一週間後の今日4月2日(土)には、さらに満開の状況がお分かりのことと思います。しかもまだ、風に散る桜吹雪も全くありません。
まさか、桜の盛りがこんなに長く続くとは思ってもいなかっただけに驚くばかりです。
ここで驚いたことはもう一つ、この満開の桜咲く小川の下流(私の背後)約3百メートルほどで市道に突き当たるまでの両岸には、犬の散歩で歩いていた青年と、建築用資材をはこんだ車が一台通っただけで、やはり独り占め、末娘の運転でしたから二人占めのお花見で、この連続2週の閑散さにも少々驚いたのです。
末娘は都内在住で飯田橋駅付近のマンションに居住していて、今年もすでに千鳥ヶ淵など有名なお花見の名所数ケ所の桜見物を済ませていますから、実家に戻ってのお花見で、誰もいない閑散とした過疎地での桜では拍子抜けするのも無理はありません。
桜 に対する画像結果私はここ十数年来、この場所と自宅近くの公園でのお花見で満足しているのに、末娘が、この川沿いの桜がどこまで続くのか見極めてみたい、と言いだしたのです。
いつもは前述のように、下流5百メートルほどでぶつかる市道を左折して帰宅するのですが、車は市道を横切って小川の左岸沿いを下流に進むと、またまた驚いたことになりました。
なんと、市道から下流の両岸の桜は幹が太く樹齢は明らかに、私が眺めて満足していた市道より上流の桜より数十年は古く、枝ぶりもよく桜の花の満開度もまるで違って素晴らしいのです。両岸から伸びた枝から溢れ咲く花びらで小川の川面は覆われ、見上げた空も青空がようやく垣間見えるほどの圧巻さ、これでは今までの私のお花見は何だったのか? これでは確かに、私が写真に収まって得意になった地点のお花見などお笑い種で、わざわざ出かける理由もないから誰もいなかったのです。
これで、長年の「独り占めお花見」にまつわる謎が解けました。要は、この下流に「お花見の穴場」があったのです。
そこで、車を降りて、地元の人らしい年配の男性に、この市道を境に上流と下流ではなぜ樹齢の差があるのかを聞きました。
そして謎が解けたのです。
かなり以前、市道(昔の村道)の西側には大きな沼があり、そこから流れ出る川が市道の下流の小川で、その両岸の桜は古くからあり、中には樹齢百年を超す桜もあるというのです。
しかも、その老人(私と同年ぐらい)は、栗橋には、権現堂堤に劣らない桜の樹木があちこちに点在していて、桜にはこと欠かないが、名所になるほどの本数が揃っていないので名所にならないのだ、とも言います。
それを聞いた末娘は、「そういえば、中学生の頃、町内(栗橋)のあちこちで桜の群落を見た」と言い、ここから改めて町内を一回りして桜探しをすることになりました。
老人の話では、市道から上流には、西側から沼に流れ入る小川があり、埋め立て後も残して、流れ出る小川と結び付けたもので、埋め立て後に苗木を植樹したものと判明、これで南栗橋駅南側の新興住宅地が11年前の東北大震災時に泥状化による家の傾斜で半倒壊し、ニュースや週刊誌種になったことも思い出しました。
その新興住宅地の新築家屋の泥状化による半倒壊災害からわずか11年、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」の例え通り、沼の埋め立て地の上に高層マンションが数棟林立し、新興住宅地の開発計画が実行に移されつつあるのです。東武鉄道や専門業者の仕事にソツはないとは思いますが、何だか不安を感じるのは私だけではないようで、この時の老人も、新興住宅地に対する耐震対策への危惧を口にしていましたから、思いは同じだったのです。
桜 に対する画像結果 その老人に別れを告げて、さらに川沿いの下流に車を進めると、その桜並木は約1キロ、それは見事な桜でした。そこからは、あちこちの桜を眺め、いざ権現堂とばかり、権現堂堤の桜が見える場所まで近づきましたが、そこでお花見渋滞に巻き込まれそうになり、あわてて国道4号線〈日光線)を強引にUターン、栗橋地区内数キロに延々と続く元渡良瀬川沿いの桜並木を堪能しながら帰宅の途につきました。今年はもう桜は満腹、こんな心境です。

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    仕事は引退しました。