季節の変わり目
花見 正樹
ここ数日、寒さが厳しくなっている上にオミクロンなどという厄介な代物に邪魔されて、人込みには近付けませんが、季節の変化は待ったなし、もうすぐ立春、春はもうすぐ近くまで来ています。
春を待つのは古今東西・老若男女みな同じ、季節の変わり目を表わすのに「節句(せっく)」という言葉もあります。
私のように高齢になると五感が鈍るのか、喜怒哀楽の感情や寒暖の差にも鈍感になっていて何かと不便です。
つい数年前までは下手な釣り師ながらも、激流の大アユ釣りを楽しみに、河原を焼く熱い太陽の季節を待ち望んだのに、その生き甲斐を諦めた今は、めっきりと季節感が薄れているのを感じます。
それでも春を待つときめきは少々残っていて、もう少しだけ人生を楽しむ気にもなっています。
春の訪れといえば、節分、立春、梅が咲き鶯が啼いて、桃や桜の季節へと続きます。
そこで、季節の区切りとされる「節句」について考えてみました。
平安時代の貴族は「人日(じんじつ)・上巳(じょうし)・端午(たんご)・七夕(しちせき・たなばた)・重陽(ちょうよう)の五節句を、大切な行事として考えていたようです。
したがって本来は旧暦であるべき「節句」ですが、今では新暦で用いられています。
1月7日の「人日の節句(草の節句)」には、薬効のある野草のる七草入りの粥を食べて健康を祈願します。
3月3日の「上巳の節句(桃の節句)」には雛人形を飾ってはまぐりのお吸い物を食して女の子の健やかな成長を祈願します。
5月5日の「端午の節句(菖蒲の節句)」には人形や鯉登を飾り、粽(ちまき)や柏餅を食べ、菖蒲の湯に浴して男の子の健やかな成長を祈願します。
7月7日の「七夕の節句(笹の節句)」には、短冊に願いごとを書いて笹に吊るして願望成就を祈願します。
9月9日の「重陽の節句(菊の節句)」には、菊の薬効が健康と長寿に効くという故事から、菊入りの酒や吸い物などで健康を祈願します。
「初節句」という言葉はどなたでもご存じだと思います。
これは、生れたお子さんが初めて迎える「節句」をいいますが、五節句の全てが該当するわけではありません。
赤ちゃんの健やかな成長を願う行事ですが、女の子は3月3日の「桃の節句」の雛祭り、男の子は5月5日の「菖蒲(勝負)の節句」の鯉のぼり、これが定番です。
というように、赤ちゃんが初めて迎える桃か菖蒲の「節句」を「初節句」といいますが、赤ちゃんが生れて21日を経過しないで「節句(女子は桃、男子は菖蒲)」の日が訪れた場合は、初節句を翌年に持ち越すこともあり、生れたばかりの赤ちゃんで「仮初節句」をご夫婦だけで行い、翌年の「節句」に両家の御両親を招いて正式の「初節句」という方法もあります。
この時に飾る人形は、代々家に飾った物も良し、譲られた者も良し、新たな物も良し、とします。
桃の節句と五月人形にも贈り方の作法があって、赤ちゃんが女子でお雛様の場合は、妻側のご両親から贈って頂き、、赤ちゃんが男子の場合は五月人形も鯉登も夫のご両親から贈って頂くのを通例としますが、ご家族にもさまざまな事情があり、なかなかこの通りにはいかないようです。
我が家でもかつてはお雛様も五月人形も飾った時代もありましたが、遠い昔のことです。
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仕事は引退しました。