白内障手術記-7
花見 正樹
最近、社会問題化している高齢ドライバーの事故、それに対する社会の風当たりは大型台風並みに高まるばかりです。
お陰で私の周囲の隠居仲間の間では免許証返上組が続出、まだ隠居にはほど遠い現役熟女などの間でも免許証返上が流行中とか。我が家も例外ではなく、子供達は、親である私に向かって無礼にも免許証返上か、免許書き換え中止かの二者択一を迫って苦言のオンパレード、車に関しては私は四面楚歌の中で身を縮めています。
警視庁ウェブサイト「高齢運転者が関与した交通事故発生状況(平成28年中)よると、10万人あたりの死亡事故件数を年齢別の事故の起こしやすさがわかります。
1、16~19歳13.5人/10万人。 2、80歳以上、12.2人/10万人。 3、70~79歳、5.4人/10万人。 4、20~29歳、4.8人/10万人。 5、60~69歳、3.7人/10万人。 6その他。
以上でみると、19歳以下、80歳以上が要注です。
私は83ですから家族の反対も無理はありません。
家族からみれば、家から駅まで歩いてもたかが13分、散歩に丁度いいし、隠居溜まりの築地に行けば乗り物には不便がない、その築地もそろそろ撤退したら? と本物の隠居扱いになりつつあるのです。
私には男の孫がいて小学校5年生、友達と映画や博物館に出かけることも増え、父親離れ祖父離れの年齢にはなりますが、何といっても孫にとってのイナカは我が家、一人で遊びに来られるようになって、アウトドアー仲間の私が免許証がなかったら・・・こう考えると、免許証は私にとっての必需品なのです。
私の手術前の目は、緑内障悪化の右眼視力は裸眼で0.01、眼鏡使用で0.15でした。左眼も緑内障ですが、こちらは失明の心配はなく、裸眼で0.2、眼鏡使用で0.5.両眼の眼鏡使用でかろうじて0.6.このままでは免許証の書き換えは無理です。そこで年甲斐もなく、視野を悪くしていると思われる白内障の手術に踏み切ったのです。
6月16日(日)の午後、視力の弱い右の眼から手術が始まりました。
頭から頬にかけて防水キャップを被ってテープで止め、腕には抗生物質の点滴、暗い部屋で椅子を倒して上を向いた病人衣服の私の顔に向けられた光の輪は煌々と明るく、そこに光る金属が何か知る由もないが顕微鏡を使って濁った水晶体を取り除き、新しい水晶体と取り換える極めて緻密な作業が行われているのは間違ありません。チョキチョキと傷をの細かく何かを刻む不気味でリズミカルな音と、大量の消毒液の流れる音がかすかな執刀医の呼吸とともに聞こえ、視界がぼやけた眼は光の輪。の中に動く手術の一挙一動を懸命に追うのだが、薬で膨張して焦点の定まらぬ視野はただぼんやりと経過を眺めているだけ。麻酔が効いて痛みはなく、手術は呆気ないほど短時間で済みました。執刀医の「成功です」の声に送られ、視野がぼやけて残念ながら顔も名札も見えぬ看護師に優しく手を引かれて、術後の休息と点滴の始末のために、準備室の深々と個別ソフアにへたと座り込んだ時は一気に緊張もほぐれました。そこで、やっと安堵の気分で前後の手術仲間とも冗談を交わしてくつろぐことが出来ました。手術後の眼には金属(アルミ)キャップが被せられ、明日の来院までは外せません。