白内障手術記-2
さて東武線春日部駅西口から駅前交番の南側に聳え立つ銀杏の大木に度肝を抜かれて駅前広場を横切るとスクランブル交差点があり、その信号を左折するとタクシーの運転手が示唆したコンビニの裏側に出ました。なるほど、これなら店内を横切れば近道なのは間違いありません。大雨の日なら店内を横切れば少しは濡れないで済みますが、その分、濡れた傘の雫で店内を濡らしてしまいます。その場合は何か買い物をすることで良心の呵責は薄らぐかと思います。そのコンビニの裏の手前右側角が自転車駐輪場で一日100円、「これは安い!」と思ったのですが生憎と私は自転車を持っていません。それに栗橋の我が家からは20キロ以上はありますから自転車では無理です。その駐輪場を右折して、すぐまた居酒屋「むさし」の手前を左折すると、広い駐車場が二つ並び、その先の角にSU眼科の4階建ての立派な近代建築風の建物がありました。どうも、私が想像した閑静なイナカの小さな眼医者さんとは無縁のようです。
その建物裏の駐車場の半分がSU眼科の来客用無料駐車場になっていて、私がそこを通ったと午前7時50分にはまだ満車になっていませんでした。私が早すぎたのです。
SU眼科の建物の角をさらに右に回って玄関口を見ると、8時半受付のSU眼科の玄関シャッターはまだ閉まっていましたが、3段ほど上がったシャッター手前の踊り場にはすでに高齢者男女7人ほどがたむろしていて賑やかに談笑していました。一番乗りどころではありません。私が皆さんに挨拶をすると、見慣れない顔で分かるのか、挙動不審で分かるのか、私を眼科初心者と見抜いたらしく、眼科通いのベテランらしい風貌の私よりは若そうな高齢者の男が「もうすぐ、15分にはシャッターが開いて中に葉入れますから」と、親切なのです。受付開始にはまだ40分もあります。そこでの会話で分かったことは、花粉症などで眼科の患者が多いときは、病院の玄関から400人以上が並んだことがあり、診察の医師も院長を含めて3人いるとのこと、しかも県内に二つの分院を持つ、県内有数の眼科だとか、これは喜ぶべきか悲しむべきか。こうして待つ間。私も眼病仲間の初心者として、諸先輩の経験や助言を聞きながらいつの間にか眼病仲間となっていることに全く違和感がない自分に気づき愕然としました。なるほど、病院の門を潜った者は、こうして病人になってゆくのです。
やがて時間が来たらしく、屋内から白衣の男性職員が表れて、シャッターを開いたときは、すでに30人ぐらいの患者が集まっていましたが、屋内に入ると実に順序良く来訪順に並んで、受け付けの数人の女性職員に予約券や診察券などを出し、受付で配布された番号順に、待合室の長いすの背もたれに張られた番号順に座って、検査が始まるのを待つことになります。
初回ということでまだ診察券もない私も、所先輩患者に交じって8番のゼッケンの張られた長いすに腰を沈めた瞬間、私はもう紛れもない眼科患者という病人に成りきっていました。