水ぬるむ春近し、されど心躍らず。
立春が過ぎても寒さは一段と厳しさを増しています。
それでも気象庁の予想では、この週明けにも関東地方には春一番が訪れるようです。
となれば、水ぬるむ季節の到来も間もなく、以前の私なら胸のときめく季節でした。
それは、3月1日が待ちに待った渓流の解禁日、源流のヤマメ、イワナを求めて前夜から山に入る楽しみがあったからです。
渓流釣りの相棒は栃木県鹿沼地方の漁協幹部で私と同年のF氏、夏になると鮎のオトリ屋も始めるという川魚好きのこの地一番の豪農の主でした。表現が過去形なのは、このF氏が糖尿病の合併症で急死、すでに八年になるからです。
以後八年、私は渓流釣りを中断して九州球磨川の大鮎釣りだけに釣り人生の全てを賭けています。
思い起こせば小学生の頃から釣り好きの父親のお伴で海、川、池と片っ端から釣り歩きました。ただ、当時の住居が千葉県市川市だったこともあり、市内の釣り会に入っても渓流釣りがありません。
夏は五井や木更津周辺の河口近くの川で小鮎の餌釣り、房総半島丘陵地帯の養老渓谷で清流の川魚を楽しむ程度でした。
それが、十代の終盤に登山に凝って週末になると山歩きの日々でした。そこで、山奥の源流に泳ぐイワナやヤマメを散見して渓流釣りも登山の楽しみに組み込んだのですが、登山より渓流釣りのほうが面白くて沢登りに転向、何度も滝つぼに転落しました。
その後、沢登りも引退し、渓流釣りと鮎釣りのダブルヘッダー、8年前から鮎だけの楽しみになりました。
もっとも私の場合は季節に関係なく春めいた気分でいますから、つねに心は弾んでいます。
これが若さの秘訣・・・残念ながらそれは自信がありません。年相応に無駄な年輪を重ねているだけの今日この頃、いまさら反省しても仕方ない、と諦めか悟りかはんぜんとしないまま今日という日も過ぎてゆきます。