油断大敵


 

油断大敵

花見 正樹

今年の夏の甲子園は猛暑の真っただ中でしたが、第100回記念ということもあり、大いに盛り上がりました。
結果的には常勝チーム大阪桐蔭の打撃が秋田・金足農の吉田投手を打ち崩して頂点に立ちましたが充実した戦いぶりでした。
決勝戦で敗れはしましたが金足農業の準優勝は立派、全国の高校球児だけでなく、私ごとき隠居にまで大いなる刺激と希望を与えてくれました。努力すれば頂点に近づけることも証明しました。さらに、大阪桐蔭の春夏連覇という強さの持続もまた素晴らしいものでした。勝つ、というモチベーションを持続するのは容易ではありません。
期待されて、それ以上の活躍をする選手もいます。

清宮幸太郎・・・ご存知ですね?
2012年のリトルリーグ世界選手権では投打に活躍し優勝、その後、所属した「調布シニア」でも全国優勝、早稲田実業高等部に進むと1年生から主軸として大活躍、高校公式戦通算70試合出場で247打数100安打、打率.405、29本塁打、95打点の素晴らしい記録を残しています。
練習試合など非公式戦を入れますと高校通算111本塁打の史上最多記録を保持しています。私が少年野球に興味を抱くのは、以前、中日の4番打者で太平洋クラブライオンズの監督もした江藤慎一氏と、名球会の協力も得てボランティアで「少年野球」の育成ボランティアをしていたからです。
清宮幸太郎は、高校卒業後、高校生最多タイ7球団競合指名の結果、ドラフト1位で日本ハムに入団しています。
入団直後にのオープン戦期間中に腹膜炎で入院、回復して一軍へ昇格、いきなりデビューからの7連続試合安打記録の、1996年のドラフト制後の単独トップの新記録を達成しています。
その清宮幸太郎が、昨日の25日、札幌ドームでまた記録を塗り替えました。
なんとプロ初の1試合3安打で、しかも本拠地の札幌ドームでは初の4号ホームランのオマケつきです。
高卒新人の本塁打を含む1試合3安打は、1993年の松井選手(巨人)以来25年ぶり、高卒新人の猛打賞は、日本ハムでは東映時代の張本選手以来59年ぶりというとんでもない記録で、これからがますます楽しみです。

期待以上の活躍は、なにも野球だけではありません。

一昨日の24日(金)に飛び込んで来たニュースも驚きました。
ジャカルタで開催中の第18回アジア競技大会で、競泳女子の池江璃花子選手(18)が、女子50メートル自由形で24秒53の大会新記録で優勝して、日本選手で最多となる6冠を達成したのです。24日の50メートル自由形を含む個人出場4種目全てで金、さらに女子400メートルリレー、400メートルメドレーリレーで金メダルと6種目が金、800メートルリレーと混合400メートルメドレーリレーが銀ですから出場8種目で金8、銀2、これも新記録です。
それにしても、スポーツにも油断は禁物、予期しない出来事もあるものです。

昨日25日(土)のアジア大会の100メートル予選で、日本の女子短距離界の女王で日本記録保持者の福島千里(30)選手がまさかの4位敗退で決勝進出ならずです。記録はごく平凡な11秒99、ベストタイムお11秒321と比較すると、速い自分が100メートルゴール時に、遅い自分はまだゴールまで8メートル・・・これでは勝負になりません。
これは、選手団主将でもある本人が、軽く走っても予選は突破、こう考えた結果での大ポカとしか思えません。
この心の失速が思わぬ失敗を生んだとしたら、今後の出場種目には全力で取り組むはずです。なにしろ、日本の短距離界のエースですから、この屈辱を勝利で晴らすことしか考えないはず、その意識がプラスに作用すればいいのですが・・・。
この「油断大敵」で一生後悔し続けたのが世界新記録を8回も出し「世界の山中」と言われながら、檜舞台のオリンピック3大会に出場で銀4金0の故山中毅選手です。
メルボルン五輪では、圧倒的に記録では有利だった400メートル自由形でオーストラリアの故マレー・ローズ選手にタッチの差で敗れましたが、山中選手は前日から体調不良の下痢気味で絶不調、マスコミにも言えず体調管理の油断を終生後悔していました。 勝たねばならないプレッシャーが重いストレスとなって、つい酒に手を出して体調を狂わすということは、勝負の世界に生きるアスリートだけではありません。仕事のストレスをギャンブルや酒に逃げて失敗した会社人間なども沢山知っています。

これからみると自民党の総裁選、安倍対石破の対決は、盛り上がりに欠けるだけでなく新鮮さや清潔感がありません。理由は、現職総裁の「勝つに決まっている」という相手を舐め切った態度が国民にも伝わってくるからです。しかし、この油断が命取り、いずれ足元をすくわれて不本意のまま総理のイスから去ることになりかねません。
油断大敵・・・これはどの世界にも生きる言葉、私も心します。