うらやましい!


美畑2
 世界中を金融危機に巻き込んでの英国のEUからの離脱、私はその気概を羨ましく思っています。
 現実には、私の本職である花見化学がドイツ、スイスと共に、取引額は少ないながら英国からの輸入もあり、今回の出来事はマイナス要因になります。したがって、私の「羨ましい」という感覚は全く次元の低いレベルでの個人的な独りごとです。かつて、仕事の関係で英国の地方を旅したとき、延々と見渡す限りの麦畑や野菜畑を車窓から眺めて、山の少ない大地に恵まれた英国が世界有数の農業国であるのを実感しています。地表面積はさほど変わらなくても、山だらけの日本と、有効面積の広い平地の英国とでは自給率に雲泥の差があるのです。
 ともあれ、参議院選挙や東京都知事選挙で国内が慌ただしいさ中、英国の国民投票で欧州連合離脱派が勝利するというショッキングな出来事が起こりました。国民投票を決めたキャメロン首相やマスコミえでさえ、離脱派が過半数を超えるなどとは予想もしなかったそうです。
 この衝撃のおかげで24日は、世界中の株価や通貨の価値が狂い、株価の値下がりだけでも日本円にして約215兆円という見当もつかない天文学的数字の膨大な損失が生じ、世界経済が大きな打撃を受けています。
 このEUからの離脱で、年々国威が落ちていた英国が、かつての大英帝国の権威と繁栄を取り戻せるどころか、さらなる国力の衰退が予測されますが、それでも英国のプライドを守ったつもりでいるのは確かです。ただ、この離脱劇で、英国の支配層と労働者層、都会と地方の考え方の違いなどがはっきりと二分されていたことが世界中に明らかになったのも確かです。移民受け入れ政策で、安い労働力に職場を奪われた労働者層の政府への反発は、これでハッキリしました。
 このEU離脱は、英国の歴史的転換期になるだけでなく、英国の将来に大きな影響を与える大事件ともいえます。
 これが合理的な判断だったかづかは、これからの英国内の政治闘争やスコットランドの独立運動なども絡んで目が離せません。次のステージは英国領各国の英国からの離脱、さらにはEU連盟加入で恩恵より弊害があったと思い込んでいるオランダや北欧各国のEU離脱への波で、これはもうEU首脳陣の必死の説得で防ぎきれるかどうか、今後の課題です。
 それにしても、国際的な出来事一つで円や株価が乱上下し国内経済が大きく左右される日本の政治的脆弱さも情けないものです。
 本来が、オランダ、フランス、西ドイツなど一部の石炭鉄鋼業者が企業利益を守るために始めた欧州石炭鉄鋼共同体という利益団体が、いつの間にか英国を巻き込んでの国益保護を目的とした政治的な欧州連合に発展させてきた経緯から考えれば、国益がないと分かった時点で連合からの離脱を考えるのは至極当然のことです。
 ともあれ、これでヨーロッパの結束の乱れはかそくされこそすれ、EU残留国家が一枚岩で、ロシア、中国などの大国に渡り合うのは難しくなります。しかも、EUと米国の蜜月時代も、EU離脱の英国と米国の密着がある限り、英国抜きのEUだけでどれだけ頑張れるか?
 ともあれ、今回のEU離脱の引き金になったEUからの財政緊縮策押しつけと国境、移民政策は水と油、矛盾だらけで決して相容れるものではありません。移民を大量に受け入れれば国の予算は緊縮どころか底なし沼に吸い込まれるように消え去り、低賃金で満足する移民に職場を奪われた一般市民の怒りを政治家はもっと早く気づくべきでした。かつては世界に君臨し、敗北を知らない英国のプライド高い国民の半数以上が、自国のエリート政治家が参加するEUに牙を剝いたのも無理はありません。
 今回の英国のEU残留派への投票の多くはロンドン近郊の狭い都市部と富裕層、労働者出身が多く農業で生活する貧しい地方都市の多くは離脱派と、今回の投票は、はっきり色分けされています。
 国民投票と言えば、財政危機に陥って国家破たんの危機に晒されたギリシャ・・・国が倒産寸前にも拘わらず、EUが要求した財政緊縮策に反発して、要求を受け入れるかどうかの国民投票に踏切「ノー」の結果を突き付けました。それでも英国と違って国力にないギリシャですからEUからの離脱は不可能、国家壊滅ですので出来ません。結局、国民の不満を抱えながらもチプラス首相が民意に逆らって緊縮策を受け入れて国の破綻を免れました。
 さて、ここで我が身に帰っての反省です。私も過去に何度かは我が家連盟からの離脱を考えました。ところが妻子連合の結束が固い上にガッチリと財力を握られていて連盟離脱後の独り立ちに不安があって離脱に踏み切れず今日に至っています。男の平均寿命を上回った今はもう勢威の高い妻子連合に抗すべくもなく、家庭の片隅に安住の地を見出し、日々好日とばかりに何とか暮らしています。だからこそ、英国国民の逆境を承知の上でのEU離脱、これを決断した猛々しい独立の気概が羨ましいのかも知れません。