女性のための開運講座ー43&新撰組


 いつか、家人の留守を見計らって、書斎の隅に積
んであるダンボール箱を取り出し、雑然と詰め込ま
れている未整理の写真を居間のフローリング床にぶ
ち開けて、仕分けをしたいと思っています。旅先の
記録や友人から手渡された新年会や忘年会、各種飲
み会や旅行などの封筒入りの写真は、中身を見るこ
ともなくそのまま机の引き出しからダンボールへと
移っています。
 家人がいない留守に整理するということは、見ら
れて都合の悪いものもあるかも知れないし、そんな
ものはあり得ないとしても、誤解を招く恐れのある
ものがあると面倒だからという意識が働いての行動
だったかも知れません。
 もちろん、何か見つかっても、何のヤマシイこと
もないのですから、堂々と胸を張って説明すればい
いだけですが、相手の顔色を見ながらイチイチ釈明
しなければならないのは面倒です。

 例えば、こんなこともあり得ます。
 パーティなどで、縁もゆかりもない女性と挨拶を
交わした程度なのに、友人のイタズラ心で写真に撮
られ、後でプリントして手渡され、捨て忘れた種々
雑多な写真の中から見つかって「これなあに?」と
やられたりすることです。
 こんな厄介な出来ごとを考えると、やはり雑然と
した写真の整理などは家人の留守を狙うことになり
ます。
 ま、私のように過去も未来もモテない男ならどん
な写真が現れようと誰も驚きませんが、日頃の行状
からして怪しまれている男なら、疑われても仕方あ
りません。
 しかし、怪しげな写真など絶対に持っていない私
でも、日々増えて行く写真をきちんと整理していま
せんから、何が紛れ込んでいるか分かりません。
 だから、家人の留守を狙っているのです。

 さて、ここからは私のことはありません。
 しかも、かなり昔のことです。
 久しぶりに会った友人が浮かない顔をしていまし
た。
「どうしたんだね?」
 寿司屋でビールの合間に聞いた話ですが・・・

 ある休日、一緒に旅行に行ったSという友人から
珍しく宅配便で菓子折りが届いたそうです。
「開けていい?」
「ああ」 
 妻がそれを開けたところ、包装紙の裏に挟み込ま
れた封筒があり、何枚かの写真が姿を現したという
のです。
 友人が危険な空気を察して、身に覚えのない写真
だと、あわてて捨てようとしますが、妻としては、
折角見つけた獲物をみすみす見逃すはずはありませ
ん。
 偶然の出会いなどは誰にでもあることです。何人
かで旅行に行けば、こんな写真も撮られます。
「こんなのは、ヤツのイタズラだよ」と、笑い飛ば
して済ませるつもりでも、敵はそう簡単には引き下
がりません。
 じっくりと写真を眺めた妻は、皮肉を込めたした
たかな笑顔でネチネチと攻め上げます。こうなると、
もう防戦一方で勝ち目はありません。
 こちらの発言は無視して、軽いジャブが飛んでき
ます。
「これ、どなた? きれいな方ですね?」
 きれい、という発言に険がある。
「温泉帰りに出会った人と撮られたのかな?」
「でも、三枚もありますよ?」
「続けて撮ったんだろ」
「でも、背景が違いますね?」
 なるほど、船上、丘の上、町中で撮った写真もあ
る。
「変だな。偶然、まわったコースが同じだったんだ
ろう」
 妻は天眼鏡を持ちだして、背景の文字を見る。
「変ですね。広告が全部中国語ですよ!」
「まさか?」
「たしか、ゴルフ仲間と香港に行きましたね?」
「うん」
「お友達は全員、女性同伴ですか?」 
「そんなこと、あるわけないだろ」
「本当に?」
「男4人の旅行だ。天地神明に誓ってもいいぞ」
「そうですか・・・では、わたしが調べます」
 なんと友人の妻は、友人がゴルフから帰る度に得
意げに見せていたスコアカードの同伴プレイヤー名
を控えていたのです。当然、夫のゴルフ仲間の男達
は知っていますから、見知らぬ名前は女性である可
能性を感じたらしいのです。

 そこからは、友人のゴルフ仲間に電話をかけまく
って、見知らぬ人の名前を伝え、季節の挨拶を届け
たいと思いますので、「ご存じでしたら、この方の
フルネームをお知らせください。携帯などもご存じ
でしたらお教えください」と、言葉巧みに聞き出し
てしまいました。
 その結果、夫が4人の仲間と行ったという香港旅
行が、なんと女性3人を加えた7人旅行で、写真を
送って来たSだけが相手の都合でか同伴者なしにな
り、そのムシャクシャした思いが菓子折りプラス写
真となったらしいのです。
 こうして、友人の奥様の鋭い追及と推測によって
夫の秘められた事実が徐々に暴かれていきます。
 そこには、検察などの証拠を捻じ曲げて自分達が
目論んだ仮説に相手を陥れようとする、歪んだ権力
意識など全くありません。ただただ真実を求めるだ
けです。それでも、友人ははかない抵抗を繰り返し
ます。
「でも、ゴルフだけの付き合いだったんだ」
 この友人の釈明もすぐにバケの皮が剥がれます。
 留守宅保存の旅行行程に宿泊先がありますから、
そこに電話するだけで簡単にアリバイは崩れます。
 宿泊日と夫の氏名を名乗って、「夫に忘れ物があ
りまして」と、根掘りは堀りで聞き出したところ、
支配人まで電話に出る騒ぎになり、ルームサービス
まで調べられ、ついに真相が分かりました。
 失くしたという夫の品は、こちらのカン違いだっ
たとの謝罪で相手も納得し何の問題も残りません。

 ホテルには旅行会社からの手配で男性2名づつ、
女性2名づつで別々に部屋は予約されていましたが、
実際にはSを除く3組はペアで泊まっていたことが
判明しました。
 友人の奥方の怒りは、同行者全員の家庭を直撃し
て大変な騒ぎになりましたが、全員が「一時的に部
屋を共にしたことは認めるが男女関係は一切なかっ
た」と、口裏を合わせて証言したことで真相は藪の
中で終わっています。

 結局、離婚にまで発展したのは女性参加者の家庭
1件だけだったそうです。その家庭も、以前から離
婚寸前だったそうですから、この事件が引き金にな
っただけです。
 友人は、ゴルフも辞めさせられ未だに針の筵に座
らされた心境でダンスに凝っているそうですが、こ
ちらの方がもっと危ないことになりそうですから、
奥さんが気の毒です。
 
 その点、鮎仲間は心配ありません。
 川の流れで鮎を追い、河原で食事をし、鮎宿の温
泉に浸かって酒を飲み、男ばかりの大部屋で疲れき
って寝るだけですから色気のないこと夥しい限りで
す。
 最近、趣味の心理学とかで、鮎釣りに凝る人種は、
世俗の色ごとなどに飽いた男達で、俗世間を離れて
清流に身を沈めて鮎釣りに瞑想の境地を見出してい
る、などと、したり顔で言っているエセ学者の説が
釣り雑誌に載りましたが、これは大きな間違いです。
 私が知る限り、鮎釣りに凝っている連中はゴツイ
連中ばかりで、間違いなくモテない男ばかりです。
 なにしろ、自分自身がそれですから絶対に間違い
ありません。
 ま、あまり自慢になりませんが・・・

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 さて話題を変えて、女性のための開運講座です。
 これは、恋愛、結婚、再婚に役立つ開運法です。
 途中からご覧の方は、遡ってご覧になってくだ
さい。勿論、男性が見ても役立つはずです。

 女性のための開運講座ー43 

 恋愛・結婚、さまざま模様-11

 先週は、12支からみた愛情運でした。
 今回は、その愛情運をさらに詰めました。
 早婚がいいか、晩婚がいいか? せっかち、のん
びり、どちらが恋愛上手か? と、いうものです。

 女性のための開運法を考察しますと、恋愛でも結
婚でも離婚でも、早すぎて成功する人と早すぎて失
敗する人、その中間で可不足なく平和な家庭を保っ
ている方と、三通りに分けることができます。
 最近の首都圏の結婚事情は、20年前からみると
大きく変革していて、女性の初婚年齢が30歳に近
づいています。
 にも関わらず、今でも出来ちゃった婚などで20
歳前後で結婚する若いカップルも結構いますし、逆
に、子供が出来るぎりぎりの年齢になって駆け込み
結婚をする女性もいますので、小学校の父母会など
では親の世代の上下差が、ますます大きく開いてい
るのは間違いありません。

 ところで、愛情問題ほど、人間の本質が剥き出し
になるものはありません。これは、種族保存の本能
に基ずいているからかも知れませんが、日頃はつつ
ましく上品に過ごしている女性でも、惚れた男が出
来たとたんに、狂ったように人柄が変るケースも珍
しくありません。

 銀座で相談室を開いていた頃、毎回、同じような
悩みで相談に来る商社勤務のオフィスレディがいま
した。
 まず、恋をして、イキイキとした笑顔で来ます。
 なれそめを語り、いかに愛し合っているかを語り
ニコニコして帰ります。
 が、それから暫くすると、暗い声、やつれた表情
で、恋を失った悲しみを打ち明けにやって来ます。
 彼女は情が深すぎるタイプで、好きになると相手
の都合など考えず、声を聞きたくなり、会いたくな
ると昼も夜もなく、当然ながら朝までも一緒にいた
くなってしまうため、好きになった途端に「結婚を
!」となってしまうのです。しかし、相手にも都合
がありますから、そう簡単には結婚に至りません。
 そうなると、ジェラシーが人一倍強いため、いつ
も妄想で相手の行動に疑いを持ち、それを口に出し
て呆れられ嫌われ避けられるようになって、結果的
に破局になってしまい、自分の心を傷つけてしまい
ます。
 それでもこりずに、また恋をするのです。

 途中経過を略して結論だけを言いますと、その女
性は恋愛には不向きであったことから、お見合い結
婚を勧め、5人ほどと見合い交際を繰り返してから
無事に食品関係で自営業の男性と結婚、今は2児の
母、過去がまるでウソのように、幸せそうです。
 余談ですが、彼女は独身時代、商社の営業部に属
していましたが、仕事の成績はつねに、恋愛の好不
調と比例していたそうです。
 これは、誰でも同様ですから特筆すべきことでも
ありません。

 どこの世界にも要領のいい人間がいますが、結婚
だけは要領の良し悪しだけでは幸不幸は決まりませ
ん。結婚後の家庭には必ず、幾度かは難局が訪れま
すが、要領のいい人は我慢が出来ず、要領の悪い愚
直な人ほど忍耐強く難局を乗り切って、幸せ度の高
い安定した家庭を築くケースが多いものです。
 これは、性格にもよります。
 出会って、数ヶ月で結婚をきめてしまうカップル
もあれば、つき合ってから十年もなるのに結婚でき
ずに、お互いの熱が覚めてしまうというカップルも
います。

 交際期間による結婚幸福度では、交際を始めて2
年以上3年未満で結婚したカップルがもっとも安定
度の高い家庭を築くといわれますが、たしかに1年
未満で熱い恋愛が持続中で愛情面では問題ないとし
ても、あばたも笑窪で相手のことをよく知らず、結
婚してから熱が冷めて冷静に見直したら、借金だら
けのつまらない男だったなどというケースもありま
すので、早過ぎる結婚も考えものです。
 とにかく、極端に短い交際期間での結婚は、相手
の本質を見ぬくことができずに、結婚後に問題を残
します。
 逆に、「長過ぎた春」の欠点は昔からいわれる通
り、恋愛感情が失せて友人のようになってしまい、
結婚しても家庭に新鮮味がないため、男女とも外で
ときめく恋があればたちまち浮気に走ってしまうと
いうマイナスのデータもありますので要注意です。

 こう考えると、理想の結婚には適度の交際期間を
経てお互いを知り、恋愛感情もほどよく熟したいる
時期が理想です。
 もちろん、交際を深めてみて理想どおりの相手な
ら問題ありませんが、付き合ってみたら理想とはほ
ど遠い相手だと知りながら、行き掛り上、結婚せざ
るを得なくて心のどこかで不安を抱えながら結婚・
・・これはいずれ破局がおとずれます。
 そうかといって、迷ってばかりでは婚期を逸して
しまいます。

 男女の仲には、結婚してみなければ分からない部
分もありますから、確かに「結婚は一種の賭けであ
る」という言葉があてはまる部分はありますが、幸
せな家庭を築くためには、その見えない部分を見定
めておかねばならないのです。
 それでも、結婚しても理解できないことも多いも
のです。
 恋愛感情の高まりから、情熱だけの勢いで結婚を
早めてしまった場合、情熱が覚めてから後悔するこ
とになります。そこで、人それぞれの性格から異な
る恋愛、結婚、再婚のチャンスを12支を見てみま
しょう。
 もちろん、既婚者の方も、ご自分の結婚の時期が
良かったのか悪かったかが分かります。

 下記は、前回の占い講座で載せた12支を参考に
しました。
  -----
 子年、相手に気配り小まめに奉仕。早婚吉。
 丑年、粘り強く求愛して好結果得る。晩婚吉。
 寅年、慎重に根回した上で目的果たす。並婚吉。
 卯年、気配り細やか、移り気が難点。晩婚吉。
 辰年、派手で高望みし過ぎる傾向あり。早婚吉。
 巳年、根気よく求愛し、粘り勝ち。晩婚吉。
 午年、明るく積極的な求愛で成功。並婚吉。 
 未年、豊かな感性で幸せを掴む。晩婚吉。
 申年、話題豊富な八方美人型でモテる。早婚吉。
 酉年、細やかに観察して相手を選ぶ。晩婚吉。
 戌年、几帳面、信頼されて愛情を確保。並婚吉。
 亥年、惚れたら周囲気にせず熱中。並婚吉。

 以上からみますと、それぞれが性格的には一長一
短があり、その長所を生かせば失敗はしないことが
分かります。
 恋愛でも結婚でもパーフェクトは望まず、70パ
ーセント以上の幸福度で満足する気持ちなら、結果
の如何を問わずに不満は残りません。失敗してもや
り直せばいいだけです。

 しかし、恋愛には別れが付きもの、恋の終りは恋
の数だけ、ともいいますが、恋愛上手は傷つかない
でいい想い出を残し、恋愛下手は心に深い傷跡だけ
を残します。
 なかには奇妙に不倫だけを繰り返す女性もいます。
 結婚願望が強すぎると、新たな交際が始まって恋
愛感情が熟す前に焦って結婚を迫り、相手に警戒さ
れてしまうタイプも恋愛下手で失敗しやすいもので
す。
 献身的すぎて、結婚がきまる前から甲斐甲斐しく
身のまわりの世話をやきたがるタイプも、あまりに
もお節介が過ぎると、相手に重荷をおわせ、結果的
に逃げたい気持ちにさせてしまうものです。
 そうかと思えば、遊びのつもりの交際から発展し
て、素晴らしい恋愛から花開いて結婚で実を結ぶ場
合もあります。
 結婚のチャンスには、タイミングというものがあ
り、そのタイミングを逃がすと、なかなかつぎのチ
ャンスがめぐって来ないものです。
 結論は、恋愛も結婚も「タイミングが大切」とな
ります。
              つづく

 では、次回をお楽しみに・・・・

      ---
 書店発売中の「坂本龍馬異聞」に続き「新撰組
3部作」を執筆中です。その内容を先にお届けし
ます。
 ホームページでも挿絵入りで連載を始めました。
        HPのURLは最後尾にあります。
      --

 新撰組ー異聞

(5)江川坦庵-3 

 噂によると槍を主武器にしていた八王子千人同心
にも鉄砲という跳び道具が配備されたらしいから、
もはや弓矢の時代ではないかも知れない。だからと
いって、庭に植えた矢竹は無駄ではない。戦場に命
を賭ける証しにも戦場で生き抜くための願掛けにも
なる。
 ここ数年、フランス、イギリス、ロシヤが日本各
地の沿岸に姿を見せ、食糧や水を求めて漁民を脅し、
強制的に異国の衣服や雑貨と交換させるという事件
が続発し、各藩の報告で幕府も対策に苦慮していた。
 そして、つい一ヶ月ほど前の嘉永六年(一八五三)
六月、突如、浦賀沖に現れたアメリカの黒船によっ
て国中が大騒ぎになり、異国との戦争に備えた俄か
造りの剣術道場が雨後の筍のようにあちこちに出来
ていた。
 この地方の半農半士の家々には先祖から受け継い
だ戦闘集団の血が脈々と流れていて、それが歳三を
も武術の鍛錬に駆り立てていた。
 歳三は甲州から秩父では甲源一刀流、上州では直
新陰流、川越では柳剛流、上州では一刀流の道場に
通ってその流儀を学び、さらに、姉の嫁ぎ先の佐藤
彦五郎宅の納屋を改造した道場では出稽古に来る近
藤周助の天然理心流を仮入門で学んでいるが、各道
場の空気は明らかに動乱の時代の到来を予測しての
激しい稽古になっている。
 この青梅村の吉野屋敷の道場に来たときは、歳三
は川越で学んだ柳剛(りゅうごう)流の切紙と称し
て立ち会ったが、すぐ道之助に「それは使わんでく
れ」と止められてしまった。
 柳剛流は、心形刀流を学んだ岡田寄良が編み出し
たという古武術で、小太刀も使えば二刀流も用いる
という臨機応変の流派で、居合い抜きや薙刀(なぎ
なた)もあり、棒でも杖でも何でも手当たり次第に
武器にする上に、取っ組み合いの柔術も得意とし、
関節をへし折り首も絞めるが、それだけではない。
臑(すね)を狙って斬るという一般には卑怯とされ
る手を使う。歳三がそれを披露すると道之助がこれ
を嫌った。
「ここは実戦じゃないからお手柔らかにな」
 歳三は、闘いに勝つために臨機応変、あらゆる手
を使う柳剛流こそ理にかなった実戦向きの剣法で、
この流派には卑怯などという言葉はない。生き残る
ためには道之助の嫌う品のなさなど気にもならない。
 どんな手でも使える柳剛流こそ真剣勝負での隠し
手と、歳三はおおいに気に入っていた。

 ただ、歳三に初天然理心流を学ばせようとする姉
ノブの夫の佐藤彦五郎や、その師の近藤周助には何
となく他流のことは言い損なっていた。多分、他流
を学んだなどと言ったら彦五郎に裏切り者扱いされ
て一生相手にされないだろう。
 この義兄の彦五郎屋敷に江戸から出稽古に来る宗
家の近藤周助という彦五郎の師も、歳三の稽古を眺
めて「基本だけをみっちり二年」と、基本型五本以
外は全く教えてくれず、ニコニコしているだけで何
の助言もないから腹が立つ。だから、義兄から近藤
周介への弟子入りを勧められても素直に「ハイ」と
は言えず、二年前から仮入門のままで天然理心流と
は疎遠になる。
 ある日、思い切って出稽古に来た近藤周助に「稽
古をお願いします」と頭を下げたら、気軽に立ち会
ってくれた。
 歳三が防具をつけて構えると、竹刀をだらりと下
げただけで「どこでも!」と言ったので、すぐに面
から打ちこんだが軽く竹刀で払われ、今まで他流で
学んだあらゆる手で攻めたのだが、ことごとく受け
られて自分からは打ち込んで来ない。ついに汗まみ
れの歳三が道場にへたり込んで荒い息を吐いて「参
りました」とは言ったが、一度も打ちこまれていな
いのだから明らかに引き分けだ。
 額に汗ひとつかいていない周助が、涼しい顔で言
った。
「歳三は、なかなか筋がいい。今度、息子が稽古に
来たら、みっちり基本から教わりなさい」
 まったく強いのか弱いのか分からない狸オヤジだ
が、歳三が一本も打ち込めなかったのだから弱くは
ない。歳三は改めて「この立ち会いは引き分けだ」
と、自分に言い聞かせて納得した。

                  つづく
      ---
 では、次回をお楽しみに・・・・
  ホームページは http://kaiundou.jp   です。
「お休み処」ー「村長の連載小説」ー「坂本龍馬」を!
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