3月のカレンダーをめくってはや6日目で、「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出ればなり」と古典にある通り、春の気配が地中にも地上にも満ち満ちてくる啓蟄(けいちつ)の日です。と、同時に生物のほとんどが活動的になり餌を求め愛を求めます。春は恋の季節でもあり、北国でも雪解けと同時にデートスポットは込み始めるそうです。恋の季節は年齢に関係なく訪れます。
なのに私の関心は情けないことに恋でも愛でもなく、水ぬるむ山間の渓流に向きます。3月に入ると関東各地の河川が、次々にイワナ、ヤマメなどの渓流魚が解禁になるからです。私の唯一の趣味道楽の鮎釣りは、ホームグランドの栃木県・那珂川の解禁が6月1日ですから、それまでの数ヶ月を待ちかねて仲間と雪の残る山間の渓流に降り、身を潜めて岸から竿を振るうことになるのです。解禁日の朝だけは、すれていない放流魚はそこそこ釣れますが、山女(ヤマメ)も岩魚(イワナ)も川に慣れてくるとそう簡単に釣られてばかりはいません。人口の餌にも飽き釣り人の腕や下手な手練手管も見破ると、さっさと水中の岩陰に引っ込んで身を隠してしまいます。そのくせ時折はチョロチョロとこちらの様子を眺め、隙をみては餌をかすめ取ってまた逃げて隠れます。
なにしろ、飲み水にもなる清流ですから隠れたところで川底に遊泳する魚体は見え隠れします。こうなると、釣る側の心理としては、竿が届いて気配を悟られない位置まで・・・と、考えますので、つい姿勢を低くして流れに身を入れて獲物を狙うことになります。いくら、防寒具に身を固めて腰上までのウエーダーを穿いているとはいっても、さすがに雪解けの水の冷たさは身に応えます。たちまち手足は冷え唇も紫色になりますが、それでも頑張ります。そうして釣った1尾の獲物・・・これこそ釣りの醍醐味ですが、釣れない時の目年残念の悔しさも格別です。もっとも、この悔しさが、次回へのリベンジにつながり・・・釣れても釣れなくても釣り人の飽くなき挑戦は続くのです。
ところで、渓流釣りの名人と言われる男を見ていると、全く例外なく女性にもモテモテの連中ばかりです。きっと、渓流魚の山女(ヤマメ)釣りなどには、まず魚の釣れる場所を見抜く眼力、魚のもっとも好む餌の用意、その上での技が必要で、この三拍子を、1場所、2餌、3に腕、と表現します。どうも、これを男女関係の恋愛の極意にすり変えても通用するような気がします。
あなたも、この釣りの極意を身につけたら今日からたちまち恋の勝利者、彼氏や彼女の一人や二人、すぐ入れ替えが可能です。
1の場所については、よりムードのいい店や場所を利用し、絶対にマイナスイメージの場所には出入りしない、ということです。
好きな人を誘うにも新たな恋人探しにも、映画、観劇、スポーツ観戦、趣味の会、花火見物からライブ、テーマパーク、食事や喫茶、など全てにおいて、恋愛にプラスになる場所を意識して活用するのです。
2の餌は、必ずしも物品には限りません。誠意、容姿、情の深さなども上級の餌として物品と対等以上の餌になります。
3の腕・・・これは、釣り下手の私には説明のし様もありません。今から釣りが上手になる要素もありませんし、こればかりは個人別ノウハウがあるようです。ただ、名人たちの腕前とやらを観察していると、コマメ、気配り、優しさ、根気、大胆、気風のよさが人並みはずれて優れていることに気づきます。これが出来れば、私も釣り名人になれるのですが、残念!