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グレーのステージ     高橋 禮子


グレーのステージ

高橋 禮子

パールグレーの海を相手にしませんか年相応のランチの誘い

アンテナに止まる烏の低きこえ地上のわれを威嚇するよう

ワイパーを力いっぱい働かせ眺めていますグレーのステージ

一瞬もとどまることのない白きなみ横一線に寄せてほ返す

磯崎の磯に顔出す白亜紀の地層がこれぞ南向く岩

ひとつだけ北向く岩あり人呼びて〈畜生岩〉なり白亜紀のもの

白亜紀の末に絶えたる恐竜の姿が見える波の向こうに

空の青うつしていない海のいろグレーの世代のわれらにやさし

閉ざされた車のなかにひっそりと茨城産のメロンがかおる

はつなつの雨のピリオドよく見ればアンモナイトの形している


ヘルペス   高橋 禮子

ヘルペス

高橋 禮子

帯状疱疹の痛みに耐えて休まざりし六月辞職の伏線なりし

帯状疱疹ほわが夏の陣このたびの主婦湿疹は冬の陣なり

主婦湿疹と診断されたる両の手が今更ながらチョークを拒む

マンハッタンに五日遊びぬ学校を辞めるわたしの夏号グラビア

運あらばプラスとならんひらめきで決めてしまった路線変更
ぶらんこの競争しようと子が誘う勝算なけれど負けたくはなし


まひるの時間   高橋 禮子


まひるの時間
高橋 禮子

黄の傘に黄色の帽子黄の腕章わがステージは黄の色ラッシュ

年齢を忘れて生きていることを否定されたら教師を辞める

バランスを崩したくなし子の人権親の人権教師の人権

新採用の頃よりずうつと聞いているチャイムの支配を逃れたくなり

渋滞をいつものようにくぐりつつ辞める辞めない行ったり来たり

決断は怖きことなり結果にてそのよしあしがはかられている

正しいと信ずる両者の対立に歩み寄りなど無理かもしれぬ

サッカーをしていたという武装グループ人の子なるを証明しており

四月より自作自演が可能なりなんでもやれるなんでもやりたい
児童用二百円なる小筆にて書いて眺めた退職顧


サーカスの歌  高橋 禮子


サーカスの歌    高橋 禮子

歌の子がまたも届けてくれました情熱の赤ブーゲソビレアを

一年に三度も四度も咲くというブーゲンビレアにあやかれるなら

伸びる芽をすっかり摘まれてわが松が男の子となれり五月五日に

育つにほ少し温度が足りなくて小さく呟く五月のメロン

サーカスの歌っていいねハーモニー昔の恋を思い出させる

ステージに輝くサーカス観客に愛を伝える(愛を呼ばう)と


どこまで伸びる  高橋 禮子

どこまで伸びる

高橋 禮子

葉桜のみどりにわれをまかせよう(大串貝塚)ゆるり巡りて

太古へと戻るのだろうこのトンネル今を払いて駆け抜けるべし
おおくし
風土記には(大櫛の岡)と記されるダイダラボウの里の広がり

巨人坐像の大きなてのひら展望台さ豊ばん生きてることを

目の前に揺れる大樹の梢には告芋におこうわたしの年など

ダイダラボウの力借りたいわたしです私の道はどこまで伸びる

夏の日がきらりと眩し大丈夫やりたいことをやってごらんよ


グレーのステージ   高橋 禮子


グレーのステージ

高橋 禮子

 

パールグレーの海を相手にしませんか年相応のランチの誘い

アンテナに止まる烏の低きこえ地上のわれを威嚇するよう

ワイパーを力いっぱい働かせ眺めていますグレーのステージ

一瞬もとどまることない白きなみ横一線に寄せてほ返す

磯崎の磯に顔出す白亜紀の地層がこれぞ南向く岩

ひとつだ北向く岩あり人呼びて〈畜生岩〉なり白亜紀のもの

白亜紀の末に絶えたる恐竜の姿が見える波の向こうに

空の青うつしていない海のいろグレーの世代のわれらにやさし

閉ざされた車のなかにひっそりと茨城産のメロンがかおる

はつなつの雨のピリオドよく見ればアンモナイトの形している


桜にキッス  高橋 禮子

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   桜にキッス

                               高橋 禮子

 入学式を的にしたるかことしの桜四月八日の水戸の満開

 つぼみ少し残して人待つ〈お堀の桜)わがステップを若返らせる

 ああしばし人であること忘れようまあるくかろく桜にキッス

 どうせなら食べられたってよかったね人目に触れぬ蕗の茎たち

キッチンの鏡にさえも口説かれるお料理こそが力のもとだと

 ベランダに椅子のひとつを置くだけでアットホームな風がふくらむ


小さなすみれ  高橋 禮子

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  小さなすみれ

         高橋 禮子

 枯れ芝の緑は抜きやすい詠うようなりあなたのフレーズ

 引き抜いた草の根っこに力あり宙にありても土を離さぬ

 風にのりやってきました集団でうすむらさきの小さなすみれ

 ハンガーに春の喪服が揺れている君のひとよの名残のごとく

 日常にどっぷりつかる昼さがり詠まず焦らず空豆ゆでて

 あしたの講座けっせきしますというたより一関市の花泉より


ナチュラルポーズ  高橋 禮子

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 ナチュラルポーズ

        高橋 禮子

 あかね色はたえんじ色魔女たちが好みに染めるかコキアの紅葉

 人を呼びひとの心を躍らせて海辺の秋を生きているコキア

 何もかも忘れそうですくれないの丘の小径をひとりゆくとき

 全くのナチュラルポーズのほうき草葉月の朝焼け思い出させる

 月の夜は魔女も訪ねてくるだろう似合いの箒を調達せんと

 バラ園のばらはそれぞれ名前までつけてもらって個を主張する


 夕べのさんぽ   高橋禮子

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  明けましておめでとうございます。

 夕べのさんぽ

         高橋 禮子

 たどりゆく里の小径のつきあたりさやぐ竹林うぐいす鳴かす

 伸びてくる飛行機雲がとどきそう夕日の赤に引かれいるよう

 みつめれば見事な返信たんぽぽのわた毛としばしにらめっこする

 思わざる藤のふじいろ優しくて触れんとするも手の届かざり

 野に咲けるマーガレットが風に揺れ花びら白くわれを誘う

 寄りてくる老化なんか防ごうとまずは始める夕べのさんぽ

 ゆうやけに雲といっしょに染められてまだ咲けそうな私だった