未分類」カテゴリーアーカイブ

冬木立 岡田香緒里(やぶれ傘同人)

冬木立

冬木立
        岡田 香緒里 
 例会に人集まらぬ野分けの夜

 古雑誌まとめし午後の秋気かな

 書き出しの言葉浮かばぬ夜長かな

 冬に入る少し猫背な理科教師

 掛け軸の下にこぼるる実千両

 マフラーに残る煙草の匂ひかな

 人影の遠ざかり行く冬木立


落ち葉 岩瀬礼子(やぶれ傘同人)

落ち葉

落ち葉
         岩瀬 礼子

 句のかけらとり散らかして後の月

 旅ごころ木守の柿の静けさに

 暮れの秋まず黙祷の同期会
 
 花八手九尺一間の佃煮や

 築地塀長し寺町冬に入る
 
 十二月裏の棒やにお嫁さん

 落ち葉しきり垣越す落葉詫ぶる間も


鳥羽にて想う  花見 正樹

鳥羽

 鳥羽にて想う
            花見 正樹

 鳥羽伏見訪ねて想ういくさ跡雲間より射る陽光鋭し

 一発の砲声響きていざ開戦あの戦場にしばし佇む

 幕軍の集結したる奉行所に砲弾炸裂歳三やいずこ

 目を閉じて激戦想えば浮かび来る凄惨な死闘に身の震え知る

 銃弾の飛び交う中に刀振るい撃たれし武士の無念さ漂う

 自動車の騒音行き交うこの道が激戦地とは夢のまた夢


花見 正樹

2016年2月28日

庭の雪

春雪
            花見 正樹

 庭の梅たわみて落ちし雪音に眼ざめて想う雪国の街

 雨戸開け眺めし夜の雪景色白ばむ闇に幻想広がる

 闇の夜に白一色の雪明かり寒さ忘れてしばし佇む

 雪音に起きし夜長を幸いに幕末史調べて朝を迎えぬ

 白く舞う春近き日の雪の朝道行く人の足元危うし

 珍しき雪を丸めて投げ遊ぶ通学児童の歓声や良し

 車窓より眺めし雪も三駅ほど都心に近づき白は遠のく

 雪溶けし築地市場の日陰道 寄せ集められし白き雪塊

 春の雪夕べには溶け跡もなし人の世の儚さ想いつ車窓眺める


旧家 伊藤厚生(やぶれ傘同人)

旧家 

 旧家
           伊藤 厚生

 晩秋の西海橋の潮の渦

 朝寒やよろい戸開ける音のして

 秋澄むや富士の姿は山の上

 水涸るる側溝に沿う旧家かな

 空っ風伊豆の山々晴れわたる

 木枯らしや月が供する帰り道

 伊豆の海 島影うすき 冬の靄(もや)


海野宿 泉一九(やぶれ傘同人)

海野宿

 海野宿
         泉 一九

 コスモスの花のあるうち孫生まれ

 コスモスの木格子さする海野宿

 秋茜雲無き空をゆきにけり 

 秋大根八百屋のおやぢ背の曲がり

 アメ横の数の子売りはだみ声で

 岩陰は街騒遠く石路の花

 北風や列に遅れるランドセル


煤払い 石原健二(やぶれ傘同人)

煤払い

 煤払い
              石原 健二

 しずまれる流れにひかり十三夜

 投げて積む稲こきあとの藁の束

 バス待つ間暮れゆく空に月の冴え

 縁先の豆乾す筵(むしろ)冬日向

 雪除けの藁に日差しのわずかなる

 風花のうだつに舞へる旧街道

 笹竹で仏くすぐる煤払い


握り飯 池田よし子(やぶれ傘同人)

握り飯

握り飯
         池田よし子 

 渓近き水車の茶屋のきのこ飯

 尾根歩く秩父の空は紅葉晴

 朱の橋に銀杏黄葉の降りにけり

 小春日のベンチに子らは握り飯

 正福寺のバンダナ地蔵小六月

 雨止んで落葉のモザイク模様かな

 山門の落葉掃かれてをりにけり


冬木立 有賀昌子(やぶれ傘同人)

冬木立

 冬木立 
    有賀昌子

 速きこと風のごとしや秋暮るる

 靖国の雪てふ菊花ありにけり

 阿弥陀仏の三道につと秋あかね
 
 蔦梅もどき木々をくぐりて空のあり

 過疎の村ころ柿干して華やげる

 ポケモンを語る孫の瞳(め)冬木の芽

 銀杏大木全き銀杏黄葉かな  


雲のゆく 大野美登里(やぶれ傘同人)

雲 

  雲のゆく    
                大野 美登里

 新しき赤きジャケット文化の日

 風の日は風の背高泡立草

 溝川の暮れ綿虫の飛びにけり

 冬夕焼遠くの富士山の雲がゆく

 酉の市帰りに七味買うことも

 卵酒作る夜更けの厨かな

 川風の強くなりけり冬の暮