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46年ぶり   高橋 禮子

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46年ぶり

         高橋 禮子

ぴったりと重なるときをわくわくと見つめる人ら心はひとつ

閉ざされた岩戸をなんとか開かんと祈る人らが身近に迫る

太陽と月のコラボが確実になされて時を進ませてゆく

輝いていたワトソンに一瞬のかげりがありて逃す優勝

日食の輝くリンクは誰のもの生あるものの夢かも知れぬ

地上より船より機より捉えるは四十六年ぶりなる日食


サプライズ   高橋 禮子

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 サプライズ

                        高橋 禮子

 めざすのは稽古場風の小劇場どんな演出そこにあるやら

 いまだ見ぬ場面にわくわく歩みつつよもやの転倒ゼブラゾーンに

 青信号わたるまなかの赤信号われに点るも気付かなくって

 両の手を荷物に占領されていて路面に頭をガンとぶつける

 納得のいかぬ転倒バランスをくずしただけとは思えぬしばし

 人形が倒れたような姿勢でも即立ち上がり「大丈夫です」

 薬局を見つけてくれる人のいてほのと温もる痛みやわらぐ

 ガードレールにバイクを寄せて「大丈夫?」頷くわれに笑顔が返る

 迫真の演技のようなサプライズ省みながらこぶに「冷えピタ」

 桜小路の芝居にやっと間に合ってゴジラとやよいの愛の語りを


春のセンバツ   高橋 禮子

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 春のセンバツ

                                    高橋 禮子

 画面からはみ出す雲あり影のありルネ・マグリットの描く「復讐」

 イーゼルが壁がふしぎな絵をつくる心の奥まで覗かれたよう

 うたたねと気がつくまでの快さかなり眠ってしまったような

 卓上に香る水仙ゆうらりと揺れて告げくる「疲れをためるな」

 ペンを置く区切りとせんか午前零時宇宙の夢を見たくなってる

 仏滅にであう四葉のクローバー仕事しごとの春のセンバツ

 私のうたごころ君よ起きたまえおまえの出番がまたやってきた


デニムの帽子   高橋 禮子

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デニムの帽子

高橋 禮子

ワイパーに弾かれてゆく春の雨ときおりピンクの花びら残す

雪でなく雨でよかった今宵こそ華のフィナーレ散りゆくさくら

三ミリの虫がおまけについてくるブロッコリーにも近頃慣れて

蕗の臺(うてな)の絵てがみ届く「ほろ苦く甘くまるごと春を食べてる」

レンジではなく茹でるとおいしいよ小さく切ってきな粉草餅

降り出した雨を合図に歩き出すデニムの帽子にジョギング十ぷん

雁沢の遺跡めぐるも四周でおしまいにする本降りとなり

大昔もちろん傘はなかったよだいだらぼうの声が聞こえた

あけがたの雪をかぶりて公園のさくら三本ゆるぎのあらず

雪の日の桜見んとてかけつけた四月のステージ私ひとり


秋空を飛べ  高橋 禮子

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秋空を飛べ

         高橋 禮子
 
 出さねばと思う便りがあるもんでついに書きたる君への便り

 近寄るを感知されたか背の低き南天の枝にとかげの静止

 私にまとわるつきたる一匹の蚊ありひいひい世をすねており

 池袋二十五階の窓に見た月夜のビル群赤い点滅

 実らざる恋はこうして土深く埋めておこうマンゴーの種

 大変なことをしてると思わずにやってしまうか事件というもの

 十二時を待たずに寝れば目覚ましの支配は受けない六時の起床

 バスタブにぷかり顔出す歌のあり何はともあれメモ残すべし


にらめっこ    高橋 禮子

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にらめっこ

               高橋 禮子

 届きたる歌集の校正済まさんとふっくらいなり五個の昼食

「徐ろ」でなくて「徐」それなら「おもむろ」にする歌の校正

 混じるにはあらず交じると言われれば確かにしかり即断をする

 微妙なる味わいそして独自性ひと文字ふた文字油断をsるな

 ほころびを見つけて補修するような気分にさせる赤鉛筆は

 プロセスならん校正に手抜きはあらず生む覚悟です。

 なかなかにこれでよしとは思えずに次の頁とまたにらめっこ

 そとは雨かぜさえ強し夕べ見た桜散るなよ花いろ透かせ

 このゲラを送り返せば空いろのわれのスペース少し広がる

 きのうより十度も低い春まひるこもるリビングわれの工房


サザのコーヒー   高橋 禮子

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 サザのコーヒー

高橋 禮子

わたしにはおとぎの世界に二億もの相続税を払った話

 そのむかしセルビア王国発祥の地とされているコソボどうなる

 あるはずの車が無いというだけで留守と判断する友のあり

 身の回り片付けるべし要らざるは捨つるべきなりごみの哲学

 教職にあるころそうだそういえばおりおり思えり大岡越前

 人のことどころじゃないのに人のこと抱えて走る師走の下旬

 黄昏の風は鴇色吹かれゆくさくら花びらひたすらひろり

 セラミックヒータふおんと唸らせて詠むぞ詠まねば月夜のがまん

 不覚にも立ってしまったわが腹は横になりても横にはならず


パンと太陽    高橋 禮子

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 パンと太陽

高橋 禮子

 人のすることはこれなり人道を説きつつ終にユーゴ空爆

 言論の自由と武力行使とが同居させられ移民多し

 分かってはいてもどうにもならぬゆえ蟻になりたい黙黙黙黙

 いつどこですれ違うのか北へ行くあなたと南をめざす私

 一日に君の書きたるこの便り二日の消印届くは三日

 ごみの日を人も鴉も待つという昔むかしはなかったことなり

 静けさの中にふたつのくしゃみあり雑誌読みいる二時の図書館


大きな時計  高橋 禮子

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 大きな時計

                             高橋 禮子

 六回の四球押し出し一転が勝利の女神の決断ならん

 擦り抜けるごとくに買いたる焼きそばは何やらホームスチールの味

 今更と思うもやはりこの空気知ってよかった楽しく燃えん

 秒針の目立つ大きな時計ありスタジオ体験生まれて初めて

 本番のわたしをぶんせきするならば緊張無心そして集中

 私を写してくれた大きなカメラ見たはずなのに思い出せない


思いっきり薔薇  高橋 禮子

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 思いっきり薔薇

高橋 禮子

 萎むことなくわが夢逸だって膨らむ風船めざすは宇宙

 湖の底に落ちたる携帯電話しばらく何を語るのだろう

 如月の風のうわさを耳たぶにキャッチしました短歌これから

 作るのが好きなんですと添えられて届くゆずみそあつあつご飯

 辞めてより二年が過ぎるこれからはわたしが私を育ててくれる