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新連歌ー6

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 初裏

 1、奥深き竹の林の庵は秋      清

2、 名残の席のやつれ風炉釜    紅舟

3、さはやかに老いに仕ふる乙女あり 清

4、 昔を今になすよしもがな    紅舟

5、水上の清き流れのしづかなる   清

6、 名もなき魚の影ぞあやしき   紅舟

7、こととはん後姿の釣り師にも   清

8、 浮世の憂ひありやなしやと   紅舟

9、仰ぎ見る月はいよいよ涼しくて  清

10、 また風そよぐ沿衣藍染め    紅舟

11、待つ恋を知りそめしより歌あほれ 清

12、 形もやさしき君か文机     紅舟

13、ほろと散る花さへ窓に訪れて   清

14、 庭の奥にほ早蕨の綿      紅舟


新連歌ー5

新連歌ー5

初表

1、松もすぎいよよゆたけし鳩の湖     紅舟
2、 人の世をなほ祈る初春        清
3、そこかしこ野辺の若草萌えそめて    紅舟
4、 峠へつづく道霞みけり        清
5、かろやかな蹄の音の遠ざかる      紅舟
6、 急がぬ旅は宿も定めず        清
7、暮れてよし今宵は月も十六夜ぞ     紅舟
8、 いつしか黙す添水をかしき      清


新連歌集ー4


名残裏

1、野の奥に日毎の夕陽あかあかと    和伸
2、 やがて木枯し吹せ荒れぬべく    忠夫
3、波凍てて北の漁りを誘ふ頃      牟世
4、 形そのままに消え残る槽      宜博
5、飯炊ぐ煙主人の息づかひ       正謹
6、 窓には今朝も鳥の噸り       裕雄
7、見渡せば花ばかりなる小野の里    忠夫
8、 七つ紋付たけなはの春       執事


新連歌集ー3

初裏

1、いささけき木の下風の洩りくれば    牟世
2、 空あらたまる山のただずみ      正謹
3、いこひする女はらから声高く      忠夫
4、 思ひのほどはいつに知られず     宜博
5、忘れ得ぬめぐり逢ひたる城の町     裕雄
6、 しんしんと雪降りつもるらん     忠夫
7、なかなかに毛を持つもののあはれさに  和伸
8、 語りつがれむ夕鶴の舞        裕雄
9.待つ宵の月とは誰かいひそめし     忠夫
10、 濁り酒にもうつる人の世       宜博
11、なみなみと瓢に酌みし音さやか     紅舟
12、 涅槃の頃の里のもてなし       裕雄
13、死にたうもなく花の顔仰がれて     和伸
14、 霞む遠路箪笥いくつり        紅舟


新連歌集ー2


名残表

1、輿入れは荷駄も通はぬ峡の村      正謹
2、 思ひもかけぬ大水の出て       忠夫
3、たぎつ瀬の那智の御社いかばかり    宜博
4、 ま青なる空たぢろがぬ雲       正謹
5、うつむきて校歌を聞ける球児らに    和伸
6、 作者を知れば名ある人なり      忠夫
7、奥座敷色紙短冊とりかこみ       裕雄
8、 伏籠の衣かをりたつ閑        紅舟
9、藤原と源氏の姫の争ひに        忠夫
10、 痛みは探し軽き言の葉        正謹
11、旅寝する涙も月に堰かねて       牟世
12、 今にも待つと告げよ秋風       宜博
13、つづりさせ鳴くてふ虫も雌を求め    忠夫
14、 命短し露の芝道           裕雄


新・連歌集ー1

連歌集「竹林」より

以前「読み書き出版」コーナーで連載した歌集の続きです。
高橋禮子講師の歌集は暫くお待ちください。
初表

1、歌いざや竹の曲(はやし)に月もがな    宜博

2、 虫の声はた惜しむべき宵         紅舟

3、大野ろに鹿呼ぶ勢子のひそむらん      正謹

4、 仮庵の軒覆ふ白萩            柏全

5、川舟の漕ぎゆく水の清くして        忠夫

6、 涼しき雲を笠の道づれ          牟世

7、いかがはと、思ふ夕立こともなし      和伸

8、 鴉の群もしづまりし森          裕雄


飛行船    高橋 禮子

 
飛行船

高橋 禮子
きょうこそは遊びごころをためさんと県庁二十五階のブランチ

上空に五つ六つの飛行船ごらんのどかな雲のアピール

雪かぶる日光の山を眺めつつ哲学しているどう生きようか

こんなにも涙ぐましきことだった誰であっても生きるってことは

透き通る空間にいて眺めいる東西南北ひかるひたち野

東京が大好きだった母なのに母のひとよをふいに思いぬ

おひさまが朝な夕なに声かけるだからお山は下を向かない

ほがらなる夕日吸い込むためならん筑波は藍を深く沈める

ゆうるりと巡る目が捉えるは路上の車おとなの玩具

キャリアカー洞持つもんで後続のマーチするりと吸い込まれそう

笠小のみんなで唱えた「アブラカタブラ」子らの遊べる校庭見下ろす

高みより眺めるからこそ見えるもの限りのあらざり春夏秋冬

西日より朱いろのメール届きたりあなたまもなく六十四歳


箱の重さ  高橋 禮子


箱の重さ

高橋 禮子

青春の便りびっしり詰められて箱の重さは一・五キロ

読み返すレターそれぞれ三角の四角の愛をころがしている

棄てるには惜しいフレーズ五つ六つ拾いて呑めり誰も見ていぬ

とっときの箱のひとつを無に戻し生れたる空間わたしの未来

バトラーの後ろ姿に似ています沈まんとする五時の太陽

シフトチェンジのためであったら一日を内に隠りて誰とも話さぬ

ななめなる日差しを浴びん北風の洗礼受けん大樹のごとく

自が影に怯えることはないだろう烏地上に影を走らす

地に生きる植物なべて潔しいかなる風にも抗うことせず


春近しー2  高橋 禮子

春近し-2

高橋 禮子
透き通る二月の空よ画布となれ描きてゆかんわれのこれから

水瓶座生まれでよかったわが肩に言葉湿らすみずがめひとつ

冷えのこるやよい二日の桜山ぐるり巡るも人まばらなり

咲くまえの桜大樹に耳を寄せしかと聞いてる水のたよりを

負けるのはことさらいやという人の洩らす言の葉カサリかさかさ

水茎とうことばころりと転がりて〈水を言葉も欲しがっている〉

春まろむポストの赤に差し出さん夕べ潤う手書きのたより

ひそやかにみずを香らす水だより君にひとこともう春ですね

烈公もごらんの通りさわさわと湧きでる泉に人ら寄りくる


春近し 高橋 禮子

春近し

高橋 禮子

透き通る二月の空よ画布となれ描きてゆかんわれのこれから

水瓶座生まれでよかったわが肩に言葉湿らすみずがめひとつ

冷えのこるやよい二日の桜山ぐるり巡るも人まばらなり

咲くまえの桜大樹に耳を寄せしかと聞いてる水のたよりを

負けるのはことさらいやという人の洩らす言の葉カサリかさかさ

水茎とうことばころりと転がりて〈水を言葉も欲しがっている〉

春まろむポストの赤に差し出さん夕べ潤う手書きのたより

ひそやかにみずを香らす水だより君にひとこともう春ですね