懐かしいトルコ旅行の想い出-1
宗像 善樹(むなかたよしき)
(元家庭裁判所調停委員、 古代史研究者、作家)
来年2020年の第32回夏季オリンピック大会とパラリンピック大会が東京で開催されることは、非常に嬉しいことです。
しかし、その半面、8年前に私たちが訪問した際に、トルコの人たちが示してくれた親日的で、優しい心遣いと親切心を想うと、トルコの人たちの失望感が胸に迫ってきて、とても悲しく、胸が締めつけられる思いがします。なぜなら、第32回オリンピックとパラリンピックの開催地にトルコも立候補していたからです。
平成23年(2011年)1月、私たち夫婦はトルコ周遊旅行へ出かけました。
私たちは海外旅行が趣味で今まで多くの国を訪問しましたが、その中でも、トルコは一番印象のよい、すばらしい国でした。
特に、トルコ最大の都市、イスタンブールに魅入られました。
イスタンブールは、アジアとヨーロッパにまたがって東西文明の接点に位置し、様々な人種と文明がみごとに融合した独特の雰囲気がある大都会でした。
イスタンブールには見るところがたくさんありましたが、それにもまして魅力的なことは、トルコの人びとの人間的な素晴らしさでした。私たちが会った人びとは温かさに溢れ、極めて親日的でした。
彼らは、街中で日本人を見かけると非常に親切な態度で接してくれました。タクシーもメーター制で、非常に安く、ぼられることもありません。チップも取られませんでした。
私たちがイスタンブール市内を見て回った主なところは次のような所です。
いささか観光案内書のような紹介になりますが、まだトルコを訪れたことのない日本の人たちにも、是非見学して欲しいところです。
まず、トプカプ宮殿。
この宮殿は、十五世紀に建設され、オスマン・トルコの歴代の君主(スルタン)が居城とした宮殿です。現在は、オスマン時代の遺物の宝物館となっており、宝物館には柄に三つの大きなエメラルドをはめ込んだ黄金の短剣や八十六カラットのダイヤモンドなどの宝石が陳列されており、その豪華さには目を見張るものがありました。
次に、考古学博物館です。
トプカプ宮殿に隣接しており、小アジア各地からの出土品やギリシャ、ローマなどのビザンチン芸術の遺品が収集されていました。私は、「アレキサンダー大王の石棺」と「嘆く女たちの石棺」を見て、その迫力に圧倒されました。エフェソスやフェニキアの遺品や彫刻もたくさんありました。
そして、トルコを代表するイスラム教寺院の「ブルーモスク」です。高さ四十三メートル、直径二十三.・五メートルの巨大ドームの周囲に六本の尖塔(ミナレット)がある寺院です。十七世紀初頭にスルタン・アフメットによって建てられた寺院で、オスマン・トルコ建築の極みだと思いました。
この建物の正式名称は「スルタン・アフメット・ジャミイ」ですが、建物内部の装飾に使われているブルーのタイルがあまりにも美しく、誰もが目を見張るような色彩であることから、いつしかヨーロッパ人が「ブルーモスク」と呼ぶようになったということです。
最期に、ローマ帝国時代にキリスト教の教会として建てられた「アヤ・ソフィア」です。高さ五十四メートル、直径三十メートルの巨大ドームを中央に有するビザンチン建築の大聖堂です。
この大聖堂は、第四次十字軍やオスマン・トルコ軍によって略奪された歴史を持ち、ビザンチン美術の傑作である多くのモザイク画が五百年もの間、漆喰で塗りつぶされていたという歴史も持っています。現在は、モザイク画も修復され「キリストを抱いた聖母マリア」など世界的な傑作を収納する博物館になっています。
以上書き記したように、私は、トルコという国が持つ文明的、美術史的な迫力の根源は、イスラム教文明とキリスト教文明が共存し、ものの見事に融和しているところにあると考えます。
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著作
咸臨丸の絆、三菱重工爆破事件、
マリちゃん雲にのる、など多数あり。