月別アーカイブ: 2016年9月

みいつけた   高橋 禮子

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 みいつけた

          高橋 禮子

 あなたへの便りを書いてポストまでほろりほどける夕べのこだわり

 みいつけた住む人あらぬ家の庭ふんぞり返ってカラスが歩く

 歩かねば歌は詠めぬとやって来た「アクワワールド」大洗の海

 中心にわれ在るごとく大いなる円を描けり水平線が

 親潮と黒潮であうこの海に高くひびけよ鐘の音ひとつ

 目の前のイルカのジャンプに眠りいる歌の心がめざめ始める

 サギフエの動きに注目そのフエが横に向くとき緊張している

 その昔さかなの仲間であったかと一瞬思えりサメを見ていて

「泳ぐのも歩くのもつまり同じだよ」言ってくれたり春のおさかな


アマリリス

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  アマリリス

                                      高橋 禮子

 すんすんと伸びゆくポットのアマリリス赤く咲くなら私も咲くさ

 ほら雲はいつしか消えてる身の内に消えずに残るこだわりいくつ

 こびとのように踊り出すのは日記帳小学中学高校時代の

思うほどおとなしい子じゃなかったね斜めに読んで捉えた私

 五十年保存しながらもう明日は燃やしてしまう日記六冊

 大きめの傘に支える向かい風われに届かず寒くもあらず

 芸術館シンボルタワーにわれひとり水戸の黄昏貸し切り気分


風のマンション   高橋 禮子

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風のマンション

                                  高橋 禮子

 見学の二文字をグッと握りしめディスプレイまで細かくチェック

 マンションに住むもよろし六階のフロアに届く二時の太陽

 思わざるわが心なりるんるんと「エキチカ二分」に傾いてゆく

 いかように払えるかと算段をするもローンに年月足りぬ
 クッキーを求めるような気安さで入りてしまえり展示ルームに

 遠ざかる風のマンション私に縁あらざりて二月のスポット

 住み慣れたわたしの家の玄関を開けて閉ざしてあれこれからだ


雄蕊のごとく  高橋 禮子

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雄蕊(おしべ)のごとく

                                 高橋 禮子

 己が葉をカサコソカサリ降らせつつ足もと固める洞ある大樹

 いま届くダンボール箱の中のある「リオの海鳴り」ざわわと響け

 初句しかりなべて始めはやわらかに選ぶフレーズ私ごのみ

 展示車の大きな目玉とにらめっこするもよからん点検すむまで

 いつよりかマーチに私が似てきます丸く丸くまあるくなって

 いくえにもガラスが私を囲むゆえ気どるほかなし雄蕊のごとく

 三冠馬なる馬の名は流石さすがのディープインパクト

 一睡もできざる夜を嘆くなかれわれの朝ぶろひと日の始まり

 六十字の稿成すだけの今日なれば煩わしきは忘れてしまえ


紅ほっぺ   高橋 禮子

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  紅ほっぺ

高橋 禮子

 わがためにわたしが選ぶ旬の味「ふるさと小包」二時の道楽

 食欲が選ぶのだろうカタログの食品ぐんぐんわれに迫り来

 遅くても咲けばいいのさわが歌集「二月のひまわり」黄を輝かす

 春雨の気まぐれならんポストへの舗道濡れたり濡れなかったり

「なごり雪」その名もゆかし胡蝶蘭プラスワンなる歳祝われる

 ふぞろいの苺大つぶ紅ほっぺ気取らぬ甘みに駿河のかおり

 マイナスモプラスもありて人世は加減乗除の繰り返しなり