岩国にて
村上 祥三
赤茶けし「善の研究」曝書せり
ネット碁の敗戦悔み飲むサイダー
駆け抜けるバイクの音や百日紅
もろきゅうはこの大きさと胡瓜もぐ
鵜飼ひ見る夜の錦帯橋の上
素手で拭く眼鏡の汚れ昼寝覚め
丸ポストの残せし町や夏暑し
280626
枇杷
宮下 倫一
捥ぐ人もなく実ってる枇杷の実は
土質にて色変はるてふ七変化
たちあふひ道路用地にひとり咲く
水中花
三宅 禮子
江戸も見し欅大木こけ青し
梅雨空に鴉啼くとき羽を揚ぐ
のそのそと蝦蟇の横切る道に待つ
盥てふ言葉懐かし日の盛り
夕凪の沖に白帆のかたまりて
水中花水を咥えて離さざる
夕焼の向こうに白き月残る
風鈴
松本 正生
青嵐山路に海の見え隠れ
暖簾町屋の朝の水の音
路地が好き風鈴の音に誘われ
花茗荷植えし覚えのなきところ
砂の家を波さらひゆく夜の秋
流れゆくテールランプや秋暑し
膝つけば波より髙し月見草