月別アーカイブ: 2016年3月

寒ミカン 奥墨ウメ子(やぶれ傘同人)

寒ミカン

寒ミカン
       奥墨ウメ子

 老人のしばし若やぐ運動会

 朝顔の種の採り入れまだすまず

 でっかすぎる藷を掘りたり美里町

 木枯らしに吹かれつつ待つ交差点

 枝陰に色つくミカン見つけたり

 咳が出て電話の先に悟られる

 襟巻を巻いて道端掃き掃除


冬木立 岡田香緒里(やぶれ傘同人)

冬木立

冬木立
        岡田 香緒里 
 例会に人集まらぬ野分けの夜

 古雑誌まとめし午後の秋気かな

 書き出しの言葉浮かばぬ夜長かな

 冬に入る少し猫背な理科教師

 掛け軸の下にこぼるる実千両

 マフラーに残る煙草の匂ひかな

 人影の遠ざかり行く冬木立


落ち葉 岩瀬礼子(やぶれ傘同人)

落ち葉

落ち葉
         岩瀬 礼子

 句のかけらとり散らかして後の月

 旅ごころ木守の柿の静けさに

 暮れの秋まず黙祷の同期会
 
 花八手九尺一間の佃煮や

 築地塀長し寺町冬に入る
 
 十二月裏の棒やにお嫁さん

 落ち葉しきり垣越す落葉詫ぶる間も


鳥羽にて想う  花見 正樹

鳥羽

 鳥羽にて想う
            花見 正樹

 鳥羽伏見訪ねて想ういくさ跡雲間より射る陽光鋭し

 一発の砲声響きていざ開戦あの戦場にしばし佇む

 幕軍の集結したる奉行所に砲弾炸裂歳三やいずこ

 目を閉じて激戦想えば浮かび来る凄惨な死闘に身の震え知る

 銃弾の飛び交う中に刀振るい撃たれし武士の無念さ漂う

 自動車の騒音行き交うこの道が激戦地とは夢のまた夢