冬深む 藤井美晴(あばれ傘同人)

干し鰯 

冬深む
        藤井 美晴

 草枯るる九重岐(くじゅうわかれ)を風が過ぐ  

 枯葉踏む音や瀬音にまぎれつつ

 唐戸から壇ノ浦まで冬夕焼

 電線にからまれている冬入日

 漣(さざなみ)や彼岸の冬灯彼岸まで

 枕辺の「静かなるドン」冬深む

 海に向く門前うるめ鰯干す

 昨夜(さや)よりの風ゆるみけり初明かり

 山門に磯の香りのあり実千両(みせんりょう)

 晴れ渡る相模の海や寒椿