月別アーカイブ: 2015年7月

大西日 きくちきみえ(やぶれ傘同人)

 大西日
         きくち きみえ
 コツと音せみの転がりおる大地

 行き行きて行方分からぬ蟻の列

 山の水受けてバケツの缶ビール

 アイロンの余熱ありけり夜の秋

 子の丈の中ほどにある浴衣帯

 居眠りの胸の上にある団扇かな

 大西日滑り台にも砂場にも


つづれさせ 藤井美晴(やぶれ傘同人)

 古寺

 つづれさせ
          藤井 美晴
 
 墓所の土川来て白しみちをしへ

 千切れ雲入れ替わりたる蝉の声

 晴れわたる往還を行くこがねむし

 夕立を雀ら高く低く行く

 軒先に風来る烏瓜の花

 雨兆す野にかるかやの穂のまばら

 無住寺の柱の木目あきつ過ぐ

 鉛筆を持つ指先に秋の蚊来

 つずれさせ雨思ひ切り振りしのち


夏をはる 根橋宏次(やぶれ傘同人)

 夏をはる
           根橋 宏次
 金魚屋の槽(ふね)に売らるる布袋草
 鯉の頭を打って塩辛とんぼかな
 釣堀のビールケースに座りけり
 泥鰌鍋「いの一番」の下足札
 草刈るや水辺に乾ぶ縄束子
 藪茗荷鴨の下を鯉くぐり
 鯉あげし濁りをさまる水の秋
 岸壁に並ぶビットや夏をはる