霜月 きくちきみえ

 霜月
          きくち きみえ
 霜月に入る金星の光かな
 違う柿干して親しき隣かな
 秋の灯を路面に広げ雨あがる
 日溜りの猫は冬毛をひからせて
 午後の陽を重ねがさねに紅葉れる
 綿虫に飽きたら吹いて飛ばしやる
 霜月の畑に乾ぶ足のあと
 手袋の指伸ばされてはずさるる
 日向ぼこ猫の加わりゐたりけり
 ひとつ木の椎の実拾うふたりかな