雪の匂い 廣瀬 雅男(やぶれ傘同人) 

   雪の匂い
          廣瀬 雅男
 草枯れの 土手に日向の 匂ふかな
 日を載せて 木の葉は流れて ゆきにけり
 砂利掘りし 穴そのままに 川涸るる
 涸れ川に 流れの跡の ありにけり
 音立てて 風の這ひゆく 冬田かな
 大鰤(ぶり)や 昼の灯ともす 魚市場
 乾鮭の 暖簾のごとに 吊られおり
 着膨れの 着膨れに売る 朝の市
 対岸を 吹雪に隠す 信濃川
 燗酒に 雪の匂いの ありにけり