山眠る
根橋 宏次
田仕舞の けむりは 杉の木をのぼり
ちりぢじりの 雲は山へと 懸(かけ)大根
二タ卓を 寄せて猪鍋 囲みたり
かたまれる 鴨のあはひに鴎降り
風花や 大漁旗に鳴りだす冬柏
飛び石のひとつ石臼 龍の玉
油揚(あげ)の油のひと玉浮いて 根深汁
とたん板 被る藁屋根 山眠る
月別アーカイブ: 2015年2月
雪の匂い 廣瀬 雅男(やぶれ傘同人)
雪の匂い
廣瀬 雅男
草枯れの 土手に日向の 匂ふかな
日を載せて 木の葉は流れて ゆきにけり
砂利掘りし 穴そのままに 川涸るる
涸れ川に 流れの跡の ありにけり
音立てて 風の這ひゆく 冬田かな
大鰤(ぶり)や 昼の灯ともす 魚市場
乾鮭の 暖簾のごとに 吊られおり
着膨れの 着膨れに売る 朝の市
対岸を 吹雪に隠す 信濃川
燗酒に 雪の匂いの ありにけり
俳句 根深汁 やぶれ傘同人
句集・やぶれ傘から
根深汁
大崎 紀夫
冬近し 羅宇(らお)屋は羅宇で きざみ吸い
古畳 もて猪垣の 尽きにけり
小石みな 河原に白し 冬霞
湯気の香も また下仁田の 根深汁
鱈(たら)をせる 男らに陽の 差しきたる
あお白き 野に鷹匠は 入りゆけり
陽のなかに 次の綿虫 現れにけり
夢の世に 隣りて海鼠 ねむるかな
湖よりの 風とひかりを 冬紅葉
酉の市 抜けて夜空を あふぎけり
座に着いて 待つ間の川音 時雨かな
干大根 上州武州 晴れわたり