夢は夢として
花咲 寿奏
東北や北海道は、これからが櫻の季節なのに、東京ははや初夏の陽気で季節は新緑、早いものです。早くも夏の商戦を過ぎて初夏の仕事・・・季節を先取りするファッション誌の仕事に携わる私だけに、季節感もやや狂いがちです。それでも初夏への装いは気持ちを前向きにしてくれます。
これも最近ですが、仕事で知り合って仲良くなった知人が、ご主人の仕事で滞在していたシンガポールから帰国されたので久しぶりにお会いすることになりました。これも楽しみです。この週末は、市の交響楽団に参加しての発表会以来、暫くぶりにフルートのレッスンです。近いうちにまた演奏会がある模様なので、今から備えておく必要があるのです。
この心の余裕も、朝から晩まで日々仕事に追われている私にとっては、明るい材料の一つです。
週末には、東北に単身赴任中の夫が帰宅しますので主婦に戻っての平凡な家庭暮らしです。その合間に、仕事絡みの礼状や友人知人への近況報告などを、手書きやメールで送っています。時々、友人に「小まめにメールできるんだから文筆業になったら?」と言われることがあります。
私には、そんな欲はありませんが、そんな才能があったら・・・正直、嬉しいですね。
しかし、地道な生活設計を考えると才能のあるなしより、経済的な面を考えてしまいます。本が売れないこの御時世、文筆で生活するのは大変なような気がして、二の足を踏んでしまいます。私自身、ファッション雑誌などを仕事にする関係で、書籍や雑誌の不況は他人事ではありません ここ十年、書籍のデジタル化が進む中で、ファッション雑誌を取り巻く環境も厳しくなるばかりです。
経費を抑える為に企画会議での食事の差し入れの習慣を止めたり、仕事を詰め込んで一日の仕事量を増やして経費を抑える出版社もあります。
その都度、出版業界は大変な時代になってしまっていることを、身を持って感じます。
大手印刷会社で働く学生時代からの友人も、会う度に愚痴ります。
「今は本が売れない時代だから、広告関連も東北大震災後はかなり自粛ムードだし、アベノミクスも企業が広告宣伝費に重点をおく様になるまでには、未だ先の話だからね。景気が悪いと、多方面での雑務が増えて大変なのよ」と話していました。
この友人とは、十数年付き合いがあるのです。彼女が仕事で扱うのは印刷物ですが、皆で物作りをするという意味合いでは、彼女と私の仕事は全く別なのに価値観が似ているので気が合うのかも知れません。
話題が出版業界不況になりましたが、私自身、現状の仕事でいっぱいですから対案まではありません。以上が「文筆業は?」と問われたときに頭の中に浮かんだことのあれこれです。
夢を見たことから発したのに、夢のない話に終始っしたのは、われながら夢がないとは思いますが、自分の狙いは「細く長く大器晩成で」といったところですから、的は外れていないつもりです。以上のように、私の日常生活の基本方針は、のんびり焦らず根気よくですが、勿論、与えられた仕事は120%精一杯やるのが持ち味ですから、時々は疲れ切ってダウンすることもあるのです。
それでも、限界以上のことを求めるられることもありますが。それに応じられないときに
周囲やスタッフに掛ける負担や迷惑を考えて、安易に引き受けることは出来ません。
それに、とくに仕事上で華やかなエピソードがあるわけでもありません。
恐らく私の所属するファッション業界も、一般の人が思い描く華やさよりも遥かにて地味なのです。これからも地に足がついた状態で焦らず前向きに・・・夢は夢として楽しんで参ります。